Maki Acevichado マキ・アセビチャード

日本の伝統料理である巻きずしに、ペルーの国民食であるセビーチェのエッセンスを加えたMaki Acevichado(マキ・アセビチャード=セビーチェ風マキ)。ニッケイ料理を象徴するペルー風巻きずしの考案者は、あの伝説の和食料理人である小西紀郎さんだと言われています。(紀郎さんのストーリーはこちらで!)

紀郎さんは、後に “世界のNOBU” と称される松久信幸氏の要請で1974年に来秘。それから松久氏がペルーを去るその日まで、2人はリマの和食レストラン “Matsuei” でともに腕を競い合いました。天才寿司職人といわれる松久氏から直々に寿司の握り方を教わり、またペルーの食文化を肌で知るため国内を隅々まで旅してまわった紀郎さんが創作したこの変わり巻きずしは、プルポ・アル・オリーボスダードに続くニッケイ料理のルーツ的存在といえるでしょう。

ペルーの和食レストランやニッケイ料理店のみならず、メニューに “Maki” の文字がある店なら必ずといっていいほどおいてあるマキ・アセビチャードは、ペルー人が大好きなマヨネーズがベース。

ですが、紀郎さんが晩年ミラフローレスにオープンさせたニッケイ料理レストラン「Oishii」のそれは、レモンの風味が爽やかなとてもさっぱりしたマキで、「え~!もしかしてこれがオリジナル?」と驚いてしまいました。最初に考案したサルサ・アセビチャードがどんなものだったかを、紀郎さんに直接尋ねなかったことが今でも心残りです。

「Oishii」のマキ・アセビチャードはさっぱりとした仕上がりで、まさにセビーチェを思わせる一品でした。

今回はリマの人気ニッケイ料理店「Kaikan」で、シェフ直々に教わったマヨベースのレシピをご紹介します。ただし業務用として大量に仕込むサルサをマキ1本分に落とし込むのは難しく、各材料の比率が多少異なっているであろう点はご了承ください。またKaikanではキサンタンガムというゲル化剤(増粘剤)を加えていますが、当レシピでは使っていないため、さらっとした仕上がりになります。

Kaikanのマキ・アセビチャードはリマで主流のマヨネーズベース。キサンタンガムの効果で、もったりとした仕上がりになっています。

ペルーのマキはこのマキ・アセビチャードの応用で、トッピングやサルサが違うだけというのがほとんど。「すし飯にこんなソースかけていいの?」と躊躇している方、これのパターンを覚えたらあとはアレンジ自在ですよ~。クリームチーズやアボカド、マンゴーを乗せていろいろ楽しんでください。

4種類もあるのに、具材はすべて同じ(苦笑)

【材料】マキ1本分

酢飯 約160g(約1/2合)
海苔 1/2枚
エビ 2~3本
小麦粉、卵、パン粉 各適量
アボカド 1/4~1/3個
刺身用のマグロやカツオなど 3~4切れ
青ネギ、七味唐辛子 少々

サルサ・アセビチャード

マヨネーズ 大1
レモン汁 小2
アヒ・リモ、セロリ、クラントロ(コリアンダー) 各ほんの少しずつ
オイスターソース 2滴
醤油 1~2滴
だしの素 ひとつまみ
塩 少々

【作り方】

1、エビの殻や尾、背ワタを取って腹側の筋を切り、グイッと引っ張ってできるだけまっすぐ伸ばす。小麦粉、卵、パン粉をつけてエビフライを作る。

2、アボカドを巻きやすい太さにカットしておく(エビフライと同じくらいの厚さがベスト)。刺身を薄切りにしておく。青ネギを細切りにしておく。

3、サルサ・アセビチャードを作る。レモン汁にアヒ・リモ、セロリ、クラントローをほんの少しずつ入れてスプーンやフォークで軽く押しつぶし、香りや風味をレモン汁に移す。

4、ボウルにマヨネーズを入れ、3のレモン汁を小さじ1加え混ぜる。そこにオイスターソース、醤油、だしの素、塩を加えて混ぜ合わせる。味見をして、酸味が足りなければレモン汁を足すなどして調整する。

5、まきすを使って裏巻きを作る。酢飯の上に海苔を置き、エビフライとアボカドを置いてくるっと丸め、まきすを使ってぎゅっと握り固め、形が崩れないよう整える。

6、薄くスライスした刺身を裏巻きに乗せ、まきすを使って上からもう一度ぎゅっと握り、刺身と裏巻きを密着させる。

7、裏巻きを10等分にカットし、サルサ・アセビチャードをかけ、細切りにした青のりと七味唐辛子を振ってできあがり(ペルーでは10等分にカットするが、8等分でも6等分でも問題なし)。

【Keikoよりひとこと】

サルサ・アセビチャードを作る時、マヨネーズにレモン汁を加えるとどうしても液状になってしいます。サルサを大量に作るならマヨネーズを手作りして濃度を調整する手もありますが、マキ1本分でそこまでできませんよね。なのでもったりしたサルサがお好きな人は、レモン汁ではなく塩レモンを利用してもいいかもしれません。

あと、ペルーのすし酢についても触れておきましょう。地方によっては砂糖がもう少し多いようですが、日本では酢:砂糖:塩の比率は4:2:1が基本だとか。一方ペルーは砂糖が多めで、レシピによっては酢と砂糖の比率が1:1なんていうのもありました。具材はエビフライ、アボカド、クリームチーズがほぼ9割で、そこにサルサやトッピングがどどーん。全体の味が濃いので、私なんかはすぐお腹が膨れてしまいます(苦笑)。

でもマキの食べ放題は人気があるし、ペルー人は本当にマキが好きなよう。日本の巻きずしとは似ても似つかないけれど、自由な発想で新しいマキを楽しんでいます。「こんなのは巻きずしじゃない!」という声もあるでしょうが、食文化の伝播による変化、または現地化として捉えれば、これはこれでありだと思います。皆さんも自由自在にマキを創作してみてくださいね!