リマの柔道クラブ「共栄館」合同練習&Pollada

これまで何度か当ブログでご紹介してきた日本人柔道家の浦田太さん。リマ市サン・ファン・デ・ルリガンチョ区にある柔道クラブ「共栄館」の館長として、ペルー柔道界の未来を担う子供たちを指導しています。

その共栄館で9月2日(土)に合同練習とPollada(ポジャーダ)を開催すると聞き、クラブを訪ねてみました。この日は時折小雨の降る寒い日でしたが、道場内は練習に励む子供たちの熱気でムンムン!外の寒さなど吹き飛ばしてしまうほどの活気です。

通常は児童・子供(4~8歳までと9~12歳まで)、青少年(12~17歳)、大人(18歳以上)の4クラスに分けて指導していますが、この日は合同練習ということで年齢もさまざま。同じレベル同士の真剣な乱取りもさることながら、付き添いの保護者たちが見守る中、大きなお兄ちゃんに果敢に挑む児童の姿は何とも微笑ましく、見ていて飽きませんでした。

緑帯や黒帯など上級者の乱取りは迫力満点!
ちっちゃい子は何をしても可愛いですねぇ

10時から始まった合同練習は1時に終了、最後は全員揃ってのストレッチと先生からのお話、挨拶をして解散です。そのまま自宅に帰る子もいれば、ポジャーダで注文したチキンを家族や友達と一緒に食べる子もおり、和気あいあいとした雰囲気。ポジャーダとは自分たちで焼いたチキンを売って、その売上げを事業資金や学費、生活費に充てるというペルー式の歳末助け合い運動のようなもの。ちょっとまとまったお金が必要な時などに行う習慣ですが、ペルー人が大好きな鶏肉料理ということもあって、クラブ関係者のみならず、地元の人々も快く買ってくれているようでした。それだけ共栄館が地域に馴染んでいる、認められているという証ですね。

動作がまだまだバラバラなところも微笑ましいです(笑)

浦田さんは、2019年12月にチャレンジしたクラウドファンディング「南米ペルーの女子高生柔道家たちを日本の大会に出場させたい!」で目標額を見事達成。2020年にいざ日本へ向けて出発という時に、パンデミックに見舞われました。ペルーは長期ロックダウンで海外との往来も途絶え、ただ時間だけが過ぎていく日々。外出禁止令が発令されたためオンラインでのレッスンを行うものの、精神的にも経済的にも相当厳しい状況が続いたといいます。当初日本へ連れて行く予定だった高校生たちは社会人となり、次々と道場を去って行きました。もうこのまま誰一人として、日本へ連れて行くことはできないのだろうか。これまで支援いただいた方々にあまりに申し訳ないが、でもどうすればいいのか・・・

と、それで諦めないのが柔道家の浦田さん。数々の困難を乗り越え、ついに1人の少女を日本へ連れて行くことができたのです!白羽の矢が立ったのは、昨年小学5年生で13歳以下のペルーチャンピオンになったという、小学6年生のペイトン・バスケスちゃん(11歳)。努力家で負けず嫌いの彼女は黙々と練習に励み、頭角を現していきました。クラブ史上最年少で緑帯に昇級した実力の持ち主でもあります。

体格差のある男子にも果敢に挑むペイトンちゃん、その表情は真剣そのもの!
おぉ、一本なるか!

日本での武者修行を終えて帰国したペイトンちゃんは、合同練習の日も黙々と乱取りをしていました。浦田さんによると「日本で教えてもらった技などを忘れないよう、またさらに技術アップしていくよう、自分で創意工夫をしながら取り組んでいます。もともと努力家な子ではありますが、帰国後はさらに集中力が増したように思います」とのこと。そしてその技を見たほかの生徒たちが、「その技を教えて!」とペイトンちゃんに頼む姿が見られるようになってきたとか。ペイトンちゃん自身の成長はもとより、周りの子供たちにもとてもよい影響を与えているんですね。日本へ連れて行くラッキーガールに彼女を選んだことは間違いではなかったようです。

日本各地の道場を訪れ、さまざまな経験を積んだペイトンちゃん。今後の成長が楽しみですね。

現在共栄館の生徒数は40人ほど。それとは別に、浦田さんが「味の素チルドレン」と呼ぶ特待生が20人ほど通ってきています。

味の素チルドレンとは、共栄館のメインスポンサーであるペルー味の素社からの支援の一部を利用して、月謝免除で指導する子供たちのこと。共栄館の理念に共感してくれた近隣の公立学校を訪問してやる気のある子や素質のありそうな子供を選抜し、特待生として受け入れているのだそうです。才能や能力に恵まれながら、経済的理由でその道に進めない子供はたくさんいます。そういう子供たちをピックアップし、ペルーの柔道人口を拡大させていきたいという浦田さんの思いには頭が下がるばかり。そして彼の活動に価値を見出し支援してくれる日系企業の存在は本当に素晴らしく、ペルー在留邦人の一人として誇らしく思います。

共栄館では『恵まれない子にチャンスを!味の素チルドレンプロジェクト』を通じて、これからも地域の子供たちにチャンスを与えていきたいとのこと。もし賛同くださる方々(企業・個人問わず)がいらっしゃいましたらぜひご連絡下さいませ。もしかしたら、そこから第二、第三のペイトンちゃんが誕生するかも?ちょっと楽しみですね。

共栄館 合同練習見学のご報告はこれにて終了。これからも浦田さんと共栄館の発展をお祈りしています。リマ在住の皆様も機会があればぜひ道場を見学してみてくださいね。