Guiso de Trigo ギソ・デ・トリーゴ

スペイン人が新世界にもたらした食料の中でも、とりわけ大きな存在がtrigo=小麦ではないでしょうか。プレヒスパニック期の主食であったジャガイモやトウモロコシからその座を奪った小麦。その加工品であるパンやパスタなしに、今日のラテンアメリカの食文化を語ることはできません。

ただし小麦の外皮は固い上に、食用部である胚乳としっかり密着しているため、米のように胚乳だけ取りだすのは容易ではありません。加えて6層にもなる強固な外皮のせいで、長時間茹でないとなかなか柔らかくならないのだそう。だから粉砕してしまうんですね。

でも精粉技術の発展のおかげで、今では小麦の外皮と胚乳の分離も可能になりました。スペインやイタリアには小麦粒のリゾットがあるし、それらの国々の食文化を受け継ぐ南米各国にも小麦粒を使った料理があります。今回は小麦粒の軽い煮込み料理、Guiso de Trigo(ギソ・デ・トリーゴ)を紹介しましょう。

¡新食材! 】Trigo mote pelado(トリーゴ・モテ・ペラード/モテ小麦)について

乾いた状態のトリーゴ。メルカドで100gあたり1.2ソレスでした。

トリーゴ・モテ・ペラードは茹でて皮を剥いた小麦の粒をローストしたもので、一般にはトリーゴ・モテ(モテ小麦)と呼ばれます。※moteは水で処理された穀類や豆類の総称。

一晩水に浸けて戻したトリーゴはふっくらで、体積も2~3倍に。

炭水化物だけでなく、タンパク質や亜鉛、鉄分などのミネラル類や繊維質なども含むモテ小麦。加熱しても米粒のように完全に溶けることはなく、しっかり噛むことで少量でも満足感が得られます。もちろんご飯と一緒に炊いて、麦飯にしてもいいですね。

日本語では「小麦の粒を食べる国はほとんどない」的な記事が多かったですが、いやいや、そんなことはないですよー。この料理だって、その起源はスペインのカタルーニャ地方にあると言いますし(by PROMPERÚ/ペルー貿易観光促進庁)。何はともあれちょっと珍しい小麦粒の料理。日本の皆さんはモテ小麦の代わりに、スペルト小麦かもち麦でぜひ作ってみてください。

【材料】2人分

  • モテ小麦(スペルト小麦やもち麦、など) 80~100g
  • たまねぎのみじん切り 1/2個
  • すりおろしニンニク 大1/2
  • アヒ・アマリージョペースト 大2
  • カルド・デ・ポヨ(チキンブイヨン) 200~300ml
  • エバミルク、または牛乳 50ml
  • ケソ・フレスコ 60g
  • ワカタイ 1~2枝
  • ペレヒル(イタリアンパセリ) 適量
  • 塩コショウ、クミン、オレガノ 適量
  • 付け合わせ:サルサ・クリオージャ、目玉焼き、鶏むね肉、白身魚のソテーなど

【作り方】

1、モテ小麦をさっと洗い、たっぷりの水に一晩漬けておく。

2、アデレソを作る。鍋に油を敷き、たまねぎのみじん切りとたまねぎの水分を引き出すための塩一つまみを振り、よく炒める。たまねぎが透明になったらニンニクを入れ、次に残りのアヒ・アマリージョペーストを入れてよく炒める。塩コショウ、クミン、オレガノを適量入れてよく混ぜ合わせたらアデレソのできあがり。

3、2の鍋にモテ小麦とカルド、ワカタイの枝を1~2本加えて蓋をし、モテ小麦に火が通るまで煮込む。小麦が水分を吸うので、足りないと思ったらが適宜足して。鍋の底が焦げつかないよう時々かき混ぜよう。

4、小麦が柔らかくなったらワカタイの枝を取り除き、エバミルクを加えて再度加熱。塩コショウで味を調え、最後にケソ・フレスコを加えてさっと混ぜ合わせたらできあがり。仕上げに刻んだペレヒルを散らそう。

【Keikoからひとこと】

モテ小麦のぷちぷちした食感が楽しいギソ・デ・トリーゴ。煮る時間を調整して、お好みの硬さに仕上げてください。たまたまうちにあった白身魚をソテーにして添えましたが、どちらかというと鶏肉のほうが合うかも?食べやすい大きさにカットして表面を軽く焼いた鶏肉を3の段階で加えて一緒に加熱すれば、栄養価もアップするしオススメです。

アルゼンチンのギソ・デ・トリーゴは牛肉が使われていたり、チリでは水とハチミツを加えてモテ小麦のドリンクにしたりするそう。またトリーゴを使ったリゾットのレシピもたくさんヒットしました。「risotto de trigo」だから「trigotto(トリゴット)」なんて呼び方もありましたよ。ははは、うまいっ!(笑)。うちにもまだトリーゴが残っているので、今度はリゾットにしてみようと思います。