ペルーの自転車ルールとその罰金

エコで手軽な乗り物として近年リマでよく見かけるようになった自転車。2019年4月に公布された「自転車利用振興法」により都市部で増加中のサスティナブルな移動手段です。便利な反面、ともすれば無秩序になりがちなこの乗り物の安全な利用に向け、運輸通信省(MTC)が作成した罰則を伴うルールが今月3日から施行されました。

街のサイクリストたちが交通標識を始めとする規則を守るよう、自転車利用振興法(法令第30936号)の運用細則を規定した大統領令第012-2020-MTCに基く主な違反行為や罰金などのペナルティは下記のとおりです。買い物やレジャー目的で日々自転車を利用している人や、これから乗ろうと考えている人は特に注意してください。

自転車の違反行為

飲酒および薬物使用下の運転

血液1リットル中のアルコール濃度が0.5グラムを超えるか、麻薬および/または幻覚剤の影響下で自転車またはその他の輪車を運転し、関連する判定試験によりその行為が確認された場合。

  • 違反の程度:極めて重い
  • 罰金の額:UITの8%(S/368)
  • 予備的措置:当該自転車の留置

※UITとはペルーの課税単位のこと。罰金などは通常これを基準とした料率で表記される。2022年度は1UIT=S/4600(現在の為替レートで約14万2240円)

ノーヘル運転や整備不良など

ブレーキ、警音器、夜間視認が可能な側方反射板のない自転車またはその他の輪車を運転した場合および、運用細則第106-H条に定める明細に適合する反射素材のある衣服を着用せず自転車またはその他の輪車を運転した場合。ただしその性質上適用されないものを除く。

  • 違反の程度:軽微
  • 罰金の額:UITの4%(S/184)
  • 予備的措置:なし

運用細則第106-H1条 自転車の装置

公道を走行する自転車には以下の装置が必要となる。

a) 制動装置
b) 警音器
c) 側方から自転車が認識できるような反射素材のステッカー(反射板)
d) 前方および後方の照明装置 – 1. 日没から日の出までの間、またはトンネル内(常時)およびトンネルの標識により影響を受ける区間(常時)。2. 霧、大雨、降雪、煙霧または塵埃もしくはこれらに類する他のあらゆる事情により視界が著しく悪化するような気候的または環境的な状況にある場合。

運用細則第106-H2条 運転者の装備

公道を走行する自転車を運転する者は以下の装備が必要となる。

a) ヘルメット(固定式のもの)
b) 反射素材の衣服 -1. 第106-H1条のd)項1および2に示される条件下で走行する場合、その自転車を運転する者および、該当する場合にはその同乗者も反射素材のある衣服を着用しなければならない。

無謀な運転

運用細則第106-G条に定めるような無謀な形で自転車またはその他の輪車を運転した場合。

  • 違反の程度:軽微
  • 罰金の額:UITの2%(S/92)
  • 予備的措置:なし:

運用細則第106-G条 サイクリストの無謀な運転

106-G.1. 以下の行為はサイクリストの無謀な運転と見なされ、交通安全規則に反するものとして禁止される。

a) 許可されていない道路の走行。
b) 車道を走行中の自動車を右側から追い越すこと。
c) 走行にあたり手信号が必要な場合を除き、ハンドルから両手を放して運転すること。スマートフォンまたは、ハンドルから手を放して操作しなければならない携帯用の機器を使用しながら運転する動作を含む。
d) 同乗者を専用の座席に座らせないままで走行すること。
e) 公道上を通行する他の自動車と連結しながらの走行、またはそれにつかまって走る行為。
f) 逆走行為。
g) 特段の標示のない交差点を赤信号で横切ったり曲がったりすること。

106-G.2. また、その性質上行使されないものを除き、当運用細則が自動車の運転手に対し定める制限および禁止事項がサイクリストにも適用され、サイクリストはその不履行から生じる責任を負う。

歩道上の走行

歩道上を走行した場合。ただし、運用細則第106-D条および第106-E条に定める場合を除く。

  • 違反の程度:軽微
  • 罰金の額:UITの0.5%(S/23)
  • 予備的措置:なし

運用細則第106-D条 自転車、駆動補助機付自転車(電動アシスト自転車)、その他の自転車の歩道の利用

106-D.1. サイクリストは次の場合に歩道を走行することができる。

a) 自転車レーンまたは他の自転車用インフラがなく、かつ車道での自転車の走行が禁止されている場合。
b) 7歳未満の子供が同乗している場合。
c) 運転者が妊娠中の場合。
d) 運転者に障害がある場合。
e) 運転者が14歳未満または高齢者(65歳以上)の場合。
f) 自転車レーンおよび車道の走行が通行不能な形で妨げられているか、または遮断されている場合。

106-D-2. サイクリストは歩道上の走行にあたり、歩行者の優先を順守しつつ速度を歩行者に合わせると共に、車道に最も近い側または建物から最も離れた側を走行する必要があり、ベルや警音器の使用は禁じられている。歩道上に歩行者が広がっている場合、サイクリストは自転車から降り、徒歩で進まなけれなならない。歩道上を走行するサイクリストは、建物に出入りする自動車が現れる危険性および、その潜在的なリスクを考慮する必要がある。

運用細則第106-E条 自転車、駆動補助機付自転車(電動アシスト自転車)、その他の自転車の都市部以外の走行

都市部以外の道路では、道路標識により明示的に禁止されていない場合を除き、運輸通信省の定める技術的なパラメータに従い自転車の走行が許可されている。

自動車の違反行為

停止線順守違反

停止線、自転車用事前停止線、交差点エリアの直前で停止しない場合、または歩行者やサイクリストが通行する権利を尊重しない場合。

  • 違反の程度:重度
  • 罰金の額:UITの8%(S/368)
  • 違反点数:20点
  • 予備的措置:なし
  • 車両所有者の責任:なし

自転車優先違反

サイクリストの優先通行権を尊重しない場合。

  • 違反の程度:重度
  • 罰金の額:UITの12%(S/552)
  • 違反点数:50点
  • 予備的措置:なし
  • 車両所有者の責任:なし

自転車走行レーンの障害となる行為

  • 違反の程度:重度
  • 罰金の額:UITの12%(S/552)
  • 違反点数:50点
  • 予備的措置:車両の留置
  • 車両所有者の責任:あり

追い越し違反

左車線からの追い越し義務を全うせず、自転車またはその他の輪車に対し追い越しまたは追い抜きをした場合。

  • 違反の程度:重度
  • 罰金の額::UITの8%(S/368)
  • 違反点数:20点
  • 予備的措置:なし
  • 車両所有者の責任:なし

ドア開放などによる走行妨害

自動車のドアやボンネットを開け、または開けたままにして自転車またはその他の輪車の走行を妨害した場合。

  • 違反の程度:重度
  • 罰金の額:UITの8%(S/368)
  • 違反点数:20点
  • 予備的措置:なし
  • 車両所有者の責任:なし

関連用語の定義

自転車

運転者の筋力で作動する二輪車で、主にペダルまたはクランクを介して後輪を駆動するもの。

駆動補助機付自転車(電動アシスト自転車)

駆動補助されたペダルを漕いで走行する二輪車で、電動アシスト自転車(EPAC)とも呼ばれる。連続した定格出力が350Wを超えない補助電動機を備えた車両であり、車両そのものだけで駆動するのではなく、ペダルを漕ぐ運転者の筋力をサポートする形で機能する。電力によるこのサポートは、車両の速度増加に従い漸進的に減少し、当該補助電動機は運転者がペダルを漕いでいないか、または車両の最高速度が25km/hに達した時点で駆動を停止または中止する。当該車両は自動車や電気自動車には分類されない。

ヘルメット(自転車用)

頭部を覆うパーツで構成された個人用の保護装備で、衝撃に耐えその影響を低減し、サイクリストを保護するよう設計され、使用者の視界を妨げないように作られている。

サイクリスト

自転車または駆動補助機付自転車もしくはその他の二輪車の運転手を指す。

輪車(サイクル)

ひとつ以上の車輪があり、自転車や駆動補助機付自転車などのように、専ら運転者の筋力によりペダルまたはクランクを介して後輪を駆動させ機能する車両。当該車両は自動車や電気自動車には分類されない。

※日本語には一輪車や三輪車など複数の形式の車両を包括的に示す単語がないため、便宜上「輪車」と表記した。

自転車レーン

運輸通信省の規定により物理的に車道と分離された公道上のスペース。既存の公道において車道および/または歩道とは隔てられている。

自転車用事前停止線

車道を横断する境界線のこと。当運用細則に基き設置されるもので、信号機のある交差点の手前における、サイクリストのための特別な信号待ちエリアの開始点を示す線。

(ソース: ペルー運輸通信省)