Tallarines Verdes タジャリネス・ベルデス

ペルーの大地が育む豊かな食材をベースに、先住民が守り続けた滋味あふれる料理と移民が持ち込んだ多彩な食文化が融合して生まれた現代ペルー料理。どの要素が欠けてもペルーの美食を語ることはできませんが、中でもイタリア料理の影響はスペインのそれ以上に大きいように思います。

たとえばイタリア移民が持ち込んだパスタは、今ではペルーの食卓に欠かせぬ主食のひとつになりました。いわゆるスパゲティ的な料理だけでなく、以前ご紹介したソパ・ア・ラ・クリオージャのように、スープにパスタを入れるメニューもたくさんあります。

しかし“基本に忠実に”なんていう単語はペルーに存在しません。オリジナルを模倣するのではなく、大胆にアレンジしてしまうのが食いしん坊ペルー人たちの腕の見せ所です。ジェノバ出身者たちが持ちこんだバジルと松の実、オリーブオイルだけというシンプルなパスタソースも、ペルー人の手にかかった途端ほらこの通り!ボリューム満点、ぐっと食べ応えのあるソースに変身しました。

そういえば、ペルーではバジルとほうれん草を合わせて使う料理が多いですね。バジルには抗酸化作用のあるβ-カロテン(体内でビタミンAに変化)やビタミンE、Kに加え、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが多く含まれています。いっぽうほうれん草にはビタミンCとB群、β-カロテンや鉄分、葉酸、食物繊維が豊富。この2種類の野菜で数種類のビタミン類をバランスよく摂取できるのだから、組み合わせない手はありません。本場のジェノベーゼソースより色味はちょっと悪くなりますが、見た目より栄養ということで、ここはたっぷり入れちゃいましょう。

とまぁ前置きが長くなりましたが、本日はタジャリネス・ベルデス(※)、エメラルド色をしたペルーの香草パスタをご紹介します。※tallarín verde/タジャリン・ベルデともいいます。

【材料】 2人分

  • お好みのパスタ 180~200g
  • タマネギのみじん切り 1/4個
  • ニンニクのすりおろし 小1
  • バジルの葉 ひとつかみ(30~35g)
  • ほうれん草 70g(バジルの2倍を目安に)
  • ケソ・フレスコ 40g
  • エバミルク 50ml
  • クルミ、またはピーカンナッツ 15g
  • 塩コショウ、クミン 適量
  • オプション:パルメザンチーズ、E.V.オリーブオイル
  • 付け合わせ:Bistec(ビステク)

【作り方】

1、パスタを茹でる準備をする。使うパスタによって茹で時間が異なるので、手順を考えながら適当なタイミングで茹で始めること。ペルー流にするならアルデンテでなく、普通に茹でるべし。また手順⑤の付け合わせについても、パスタの仕上がり時間を考えながらタイミングを見計らって始めよう。

2、パスタソースを作る。フライパンに油を敷き、タマネギをよく炒める。タマネギが透き通ってきたらニンニクを入れて炒め、クミン少々とほうれん草を加えてさっと炒める。

3、ミキサーに2とバジルの葉、ナッツ、チーズ、エバミルクを入れてよくかくはんする。塩コショウを加えて味を調えたらパスタソースのできあがり。ソースの濃度はエバミルクで調整しよう。

4、3のパスタソースを茹で上がったパスタに絡めればタジャリン・ベルデの完成。仕上げにE.V.オリーブオイルやパルメザンチーズをかけるとなおよし。

5、付け合わせのビステクを作る。薄切り牛肉をよく叩いて繊維を壊し、柔らかくなったら両面に塩コショウとガーリックパウダー(またはすりおろしたにんにく)を振り掛ける。フライパンに多めの油を入れて牛肉の両面を焼き、仕上げにバターを加えてできあがり。

【Keikoからのひとことアドバイス】

ペルーでは1人あたりの乾麺の量は100~120gが標準で、レシピを検索しても「4人前500g」といった表示がほとんど。その大量のパスタにこってりもったりとしたソースを絡め、あまつさえ付け合わせまで乗せちゃうのだから、ペルー人って本当に大食漢ですよね。ソースが濃厚だし、付け合わせもあるので私はパスタの量を少し減らしましたが、1人あたり100gくらいまでなら、このレシピの量で賄えると思います。

それにしても、ペルー人はやっぱり“プレ(ピューレ)”が好きなんですね。『プレさえあれば、大好きなご飯をいくらでも食べられる。だからパスタソースももったりクリーミーにすれば、もっとパスタを食べられる!』そんな発想じゃないかと思えてなりません。

最後に、今回の付け合わせに選んだbistec(ビステク)についても簡単にご紹介しておきましょう。ビステク=ビーフステーキといってもさほど上等な部位ではなく、赤身肉の繊維を叩いて叩いて叩いて・・・薄ーく延ばすことで無理やり柔らかくするという力業のビーフステーキで、タジャリネス・ベルデスの付け合わせに好んで使われます。もちろん鶏むね肉のソテーでも、目玉焼きでもOK。その日冷蔵庫にあるものを自由に合わせてくださいね。