インカ文明の遺産「ジャイアントコーン」その特徴と歴史

世界遺産マチュピチュ遺跡が鎮座するペルーのクスコ州。聖なる谷を流れるビルカノタ川のカルカ郡からウルバンバ郡にかけての両岸、サン・サルバドルからオリャンタイタンボt地区チルカに至る約70kmのエリアで栽培されているのが、日本でもおなじみのジャイアントコーン(チョクロ)です。

クスコのジャイアントコーンはその学名をParaqay saraといいます。このトウモロコシは標高2600m~3050mの範囲でのみ育ち、丸く大きな粒がついた8列の穂(軸)を持ち、2~3mの高さまで成長します。

2005年9月26日以来、ジャイアントコーンにはペルーの原産地呼称制度が適用されています。つまり、クスコ州カルカ郡7地区のうちサン・サルバドル、ピサック、タライ、コヤ、ラマイ、カルカの6地区、および同州ウルバンバ郡7地区のうちウルバンバ、ワイリャバンバ、オリャンタイタンボ、ユカイ、マラスの5地区でのみ栽培される品種として世界中に認識されているということなのです。

今日ペルーのスーパーフードとして知られているこの作物には、いにしえのペルーに始まる長い歴史があります。リマのパチャカマック遺跡には黎明期から晩期にかけての建造物があり、そこではすでにパチャカマック神の腰に巻かれたトウモロコシの絵が見つかっています。数本の穂先から成るそれは、ジャイアントコーンのものであることが判っています。

ジャイアントコーンはまた、インカ帝国における基本的な食材のひとつでもありました。著名な科学者ポール・マンゲルドルフは、ジャイアントコーンの栽培と品種改良について「インカ文明が人類に残した特に重要な遺産であり、インカの農業技術が高度に発達していたことの紛れもない証拠だ」と評しています。クスコの聖なる谷では、このトウモロコシを栽培するための灌漑施設や棚田など、インカの人々による大規模な建造物を今でも目にすることが出来ます。

カルシウム、リン、マグネシウム、カリウムを始め、ビタミンB群(B1、B2、B5)やアスコルビン酸などの栄養素を豊富に含む、栄養価の高いジャイアントコーン。タンパク質やミネラル分のほか、古代ペルーの伝統的な植物性食品に見られるポリフェノールには、降圧作用があるとされています。

このおいしいトウモロコシのポテンシャルは、数々のペルー料理にも生かされています。新鮮なジャイアントコーン、そら豆、アヒ・ミラソル(乾燥させたアヒ・アマリージョ)、ワカタイを使ったスープ「ラ・ラワ」や、ジャイアントコーンの粉から作ったトルティーヤと一緒に頂くクスコの看板料理「チリウチュ」など、今日ではクスコにおける代表的なアンデス郷土料理の一角を成しています。またウミータやタマルの生地や、それらを包む薄皮にもジャイアントコーンが利用されています。

ペルーのジャイアントコーンは、生や粒、スナックなどの形で日本や中国、欧州の主要各国などに向け輸出され、すでに国際市場で高い評価を得ています。ペルーを象徴する産品として、近年では世界の注目を集めるようになりました。

(ソース: ペルー貿易観光促進庁/Promperú)