“Romper el silencio” 静寂を打ち破る

昨夜、バランコのアートギャラリー Yvonne Sanguineti で開催された石彫展「Romper el silencio(静寂を打ち破る)」のオープニングに出席した。ペルー・リマ在住の彫刻家、青木通子(Michiko Aoki)さんの個展だ。会場には多くのファンが足を運び、個展開催への祝辞と作品への賛辞を惜しみなく伝えていた。

株丹達也駐ペルー日本大使と通子さん

通子さんの個展には過去にも伺ったが、今回のタイトルには特に感じるものがあった。あの小西紀郎という強烈な個性を放った夫を失った後、彼女がどうやって生きていくのかとても気になっていたからだ。

「お前のような若輩者がなんておこがましいことを」というお叱りは、甘んじて受けよう。それでも取材(前編後編)を通して知った、彼女の繊細でわがままでしなやかで凛とした性格に魅せられてからというもの、やはり気になって仕方がない。彼女と話す度に「生きるのが不器用な人だ」と実感する。そんな部分を厭い、愛したであろう紀郎さんはもういない。

ギャラリーのキュレーターらしき女性が、通子さんのことを「una persona fina」だと言った。fuerte(強い)でもsensible(敏感な)でもなく、fina。「繊細な」という意味もあるけれど、この場合は「鋭敏な、感受性の鋭い」だろうか。この的確な表現に、通子さんへの評価の高さが伺える。それはセレモニーの盛況さにもよく現れていた。

“他者を信頼する、他者から守られている”そんな場所の存在をいつも感じている。それと同時に、未知なる世界へ飛び出すため、私はその守られた場所から逃れたいのだと気づくのである。

壁に書かれた、ストイックな通子さんらしい言葉。人と話すのは苦手なのに、石のことになるとどこまでも雄弁になる。そんな彼女にとって、この1年はまさに自分の殻(静寂)を破る年だった。今は作品作りだけでなく、 Toshi Restaurante Nikkeiの料理や盛り付けの監修も担う日々。料理の完成度は、妥協を許さない通子さんならでは。一流の人は分野が変わっても一流なのだ。

作品について何も書いていませんが、そこは皆々様に自由に楽しんで頂くということでお許しを。青木通子さんの個展 “Romper el silencio” は、Barrancoの Yvonne Sanguineti Galería de Arte で9月9日まで開催。皆さまぜひ足をお運びください。

““Romper el silencio” 静寂を打ち破る” への2件の返信

  1. 青木通子さんを小学校の時から知り、二十歳頃の美貌を知る者として、ペルーへ渡り、約40年間、時空を超えて、活躍されている事に感銘しております。確かに「鋭敏な、感受性の鋭い」人です。「鋭敏」よりは「繊細で感受性の鋭い」人と思います。この齢ではペルーへ見に行けないのが残念な気がします。

    1. 森さま
      以前もコメントをくださいましたね。ありがとうございます。
      通子さんに会う機会があったら、メッセージをお伝えしておきます。

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