クスコ48時間ストの現場 その3

なんとかオリャンタイタンボを通過。しかしこの先のウルバンバやピサックのほうが、道路封鎖が激しいと読んだのだろう、先行する車の多くが本線を選ばず、パチャルの橋を渡りだした。「あっちは土砂崩れもあるんだが…」悩んだ末、我々のドライバーも対岸の道を選択。この選択が功を奏したのは言うまでもない。

この道はウルバンバやカルカを通る主要道路ではなく、アンタへと繋がる未舗装道だった。先刻からの雨で道は最悪。ぬかるみから抜け出せないセダンや、パンクしたワゴンが続出した。よほど精神を集中させているのだろう、物静かなドライバーの口から、単語とも言えないつぶやきが漏れ出る。完全なる闇、しかも雨。車のライトが照らす2~3m先が右なのか左なのかも分からない。運転席のすぐ後ろにいた私は、手に汗を握りながらただひたすら前を見つめていた。

21時30分、ポロイを通過。やっとクスコに戻ってきた。クスコ市内に向かう坂道には石が置かれていたが、市内は大丈夫なようだ。オフィスに電話したドライバーは、「これはもう大問題です!すぐになんとかしないと!」と必死に訴えたが、携帯から漏れるセニョリータの声はあまりにも緊張感がなく、「今日はもう遅いから明日ね」を繰り返していた。ああ、気の毒に。この国はいつだって真面目な人が損をする。

アルマス広場に到着。乗客たちは何事もなかったかのように、一瞬で散ってしまった。オフィスに緊急報告しに向かったのだろうか、ドライバーの姿もなかった。私達が宿に到着したのは22時。こんな事態でも6時間で移動できたのは、まさに奇跡だ。

翌日22日はクスコ市内で過ごした。アルマス広場ではデモ行進が華々しく繰り広げられ、街は交通手段一切を取り上げられた外国人観光客で溢れていた。

広場でシュプレヒコールを上げていたデモ団体は2時30分すぎに解散し、硬く門を閉ざしていた店舗も営業を再開。街は何事もなかったかのように動き出した。この日、国会本会議は官民による国内文化遺産の保護管理を認める立法政令第1198号の廃止を採択した。48時間にも及ぶこのストで、多大なる被害を被った観光客への主催者側からの謝罪の言葉は一切ない。

終わり

クスコ48時間ストの現場 その1

クスコ48時間ストの現場 その2