クスコ48時間ストの現場 その2

バスは約束の30分遅れで迎えに来た。クスコを早朝出発したため、道路封鎖が始まる前に該当地域を越えることができたのだろう。車内は、欧米やラテン諸国出身のいわゆる外国人観光客ばかりだった。彼らはこの日の午前中にマチュピチュ観光を終えたばかりで、今クスコで何が起こっているのか、誰もピンときていない様子だった。

途中までは意外なほど順調だった。外は激しい雷雨だったが、車内なので問題なし。途中標高4300mを越す地点もあり、「こんなところを何キロも歩かされたら死ぬ!」と心配したが、そこすらすんなり通過できた。しかしオリャンタイタンボに近づいた19時すぎから、路上に置かれた石の数が増えてきた。

19時20分、デモ部隊に車を止められた。道は封鎖され、火も燃やされている。代表と思しき村人が一人、険しい表情のままバスに近づいてきた。「こんばんは、皆さん。今日がどういう日かはご存知ですね?我々は今、戦っているのです。だからここは通せません」ドライバーの顔に緊張感が走った。

それからしばらく、村人とドライバーとの押し問答が続いた。しかし「このデモの意義は分かってます!でも人としてどうなんですか?何の関係もない外国人を、我々の問題に巻き込むんですか?!」というドライバーの声に、それまで一歩も譲らない姿勢を見せていた村人が、一瞬黙り込んだ。

幸いにも心ある村人だったらしい。「石はどけない。通りたかったら路肩を通って行け」と言い捨てた。炎が、通過するバスをにらみつける村人たちの顔を照らす。凄く怖かった。ドライバーと一緒にお願いしたほうがいいのか、黙っているほうがいいのか分からず、ドキドキした。通過した後ドライバーにお礼を言ったのは、私ともう一人だけだった。他の観光客がまるで他人事のように振舞っているのが、とても悲しかった。

少し進むと、また道路が封鎖されていた。降りしきる雨の中近づいてきた若者たちは、なんとチップを要求してきた。信念など何もない。こいつらはデモに乗じて金を巻き上げるただのチンピラだ!ドライバーから5ソレスを受け取ると、顔を隠しながら「早く行け」とせかした。最悪だ。この夜、聖なる谷は無法地帯と化していた。

つづく。