Museoという名のなんちゃってギャラリー

ペルー人の生きるパワーと図太さ、いい加減すぎる商売をそれなりに軌道に乗せてしまうビジネスセンスにはいつも感心させられる。あっけらかんとして、卑屈さや後ろめたさの欠片もない。図々しい上に抜け目なく、本当に適当。でもなぜか憎めない。このMuseoもそういう視点でみると面白い。

先日20人ほどのグループで、アンデスのとある村に行ってきた。そこで見つけたのが、このMuseo(博物館)だ。村はずれの枯れ川の向こうに建つそれは、ゴザで四方を囲っただけの粗末なもの。今はまだ乾期だからいいが、雨期になって川に水が戻ったら完全に離れ小島になってしまうような場所だ。逆を言えば、そういう場所にしか造れなかった(造らせてもらえなかった?)のかもしれない。その時点ですでにまともではない。

中には店番の女性が一人。何が展示されているのかと聞いたら、「この先の展望台から歩いて2時間のWascasana遺跡から出土したもの」という。私が「Huascasana」とメモをしたら、その女性は「違う違う、Wよ!」と。ふーん、ケチュア語ならHから始まるのが普通なのにねぇ?

入場料2ソレス(約75円)を払って中に入った。が、一目見るなり笑ってしまった。だってこれ、どう見たって偽物じゃない!?

アンティオキアのなんちゃって博物館素人ながらアンデス文明に興味を持ち、それなりに博物館を訪れている者として、この展示物のいい加減さには怒りをさくっと通り越して、笑うしかなかった。私の知りうるどのアンデス文明の欠片すら踏襲していない斬新なものばかり。こんな宇宙人みたいなのが出てきたら、それこそ大発見だよ!

アンティオキアのなんちゃって博物館その2この清々しいまでのいい加減さはなんだろう。しかもそれぞれの彫刻に、「肥沃の神とその妻たち」と言ったタイトルまで付けられている。アートギャラリーにしたかったが人が来ないので、店名を「博物館」にしたというほうが正しい。そんな店、大阪にいっぱいあったなぁ。

アンティオキアのなんちゃって博物館その3Museoの地面に掘られた小さな穴に、ボロボロのファルド(ミイラ包み)が置かれていた。女性曰く、これは「少女のミイラ」だという。でも先の遺跡から発掘されたものではなく、どっかから拾ってきたらしい。グループの一人が「なぜここに置いているの?文化省に連絡した?ちゃんとした機関に持って行って、調査してもらうべきじゃないの?」と問いただしたら、「そんなの大変だし、持って行くのにもお金が掛かる。彼女はほら、ここで穏やかに眠ってるんだし、いいんですよ」と本音をぽろり。仮にも「博物館」なんだから、もう少し上手い言い訳を考えなさいよ。

展示物を「すべて本物だ」と言い、しかも「リマ文化(紀元後100~650年)」と説明するのは明らかに詐欺だろう(Huascasanaはインカの遺跡、そしてHから始まる)。とは言え、これらを見て一目でおかしいと思わなかったら、それはもう見る側の責任だ。と思っていたら、グループのおじちゃんが「おぉ~素晴らしい!」と驚嘆の声をあげていた。う~む、だからこういう商売が成り立つんだなぁ。

色んな意味でとっても楽しい博物館だった。とは言え、さすがにこれをペルーの観光情報として書くのは申し訳ないのでブログに。興味のある方はご連絡下さい。場所をお伝えします。