マチュピチュを見て死なないために

「ナポリを見て死ね」という言葉がある。風光明媚なナポリを称える名言だが、確かに世界には「これを見たらもう死んでもいい!」と思ってしまうような素晴らしい場所がいくつかある。その中の一つがペルーのマチュピチュだ。

世界遺産マチュピチュ遺跡。その雄大で高潔な風景は世界中の人々を魅了する。特に早朝、流れる雲の合間から姿を現す石組やワイナピチュの荘厳さは筆舌に尽くしがたい。ナポリが何者ぞ。やっぱりマチュピチュが一番!

一方、マチュピチュへの道は遠く険しい。そして残念なことに、毎年複数の死者を出している。その2大原因は崖からの滑落と心臓発作。持病のある人は「旅行を止められるから」など言わず、事前に医者や旅行会社に相談しよう。そして少しでもスケジュールに余裕のあるプランを選択して欲しい。

持病の有無に関わらず、心臓に負担を掛けないためと高山病予防のために、水分はたっぷり摂るようにしよう。ペルーで高山病に苦しんだ知人を何人か知っているが、多くに共通していたのは普段から水分を摂る習慣のないことだった。いくら頭では「水分補給が大切」と分かっていても、習慣がないからついその一口を後回しにしてしまう(自分で気が付かないから性質が悪い)。加えて高地は空気が乾燥しているので、肌からも普段以上に水分が蒸発している。周囲に「水、飲んだ?」と言われて「さっき飲んだから大丈夫」と答えてしまう人は、要注意だ。

クスコ在住の知人によると、残念ながらマチュピチュ遺跡にAEDは配備されていないらしい。医療設備の整っていないこの国で、救急救命を頼るのはもともと無理。とにかく自分の身を守るのは自分しかいないのである。

高山病に関する基本知識や情報は、巷に溢れているので割愛する。日本では入手が難しいとされる高山病予防薬、ダイアモックスの処方が可能な病院リストは、日本旅行医学会のサイトにあるのでそちらをどうぞ。だたダイアモックスは利尿作用があるので、予防のつもりがかえって水分不足になる恐れも。その辺りの注意点はよく確認して頂きたい。

最後に「でも水を飲むとトイレがね・・・」と思っている方。心配しなくても、高地は本当に空気が乾燥しているから、飲んだほどは出ません。もしたった50センティモス(約18円)のトイレチップを惜しんでいるなら、それはバカとしか言いようがない。ここまで来て、まさかそんな人はいないと思いたいが。

気が付けば2014年もあとわずか。そして今年も残念ながら何人かの犠牲者が出た。クリスマスから年末年始にかけて、また世界各国から大勢の観光客がやってくるだろう。どうか皆様、楽しく安全な旅行を。それだけがペルーを愛する在住者の願いです。