リマ首都圏の交通渋滞 経済的損失年間2200億円

慢性的な交通渋滞に起因する首都リマの経済的損失は、年間でおよそ60億ソレス(約2204億5900万円)と推定される。膨大な時間のロスや事故の多さが問題化するなか、道路関連の公共機関を一元的に管理する国家道路交通安全庁の創設が望まれている。

「道路利用者の交通法規不履行に加え、道路設計の悪さがペルーの渋滞を引き起こしています。手薄な取締り体制や不完全な処罰の状況も重なり、設計の不具合は運転マナー低下の原因にもつながっています」ペルー自動車協会(AAP)と市民交通十字軍協会両組織の会長を務める交通専門家、アドリアン・レビージャは記者会見でこう主張した。

4000か所におよぶ交差点

同専門家は、交通通信省(MTC)が道路交通法に則った適切な取締りを実施しておらず、法令自体も不完全かつ時代遅れであり、国際標準に沿わない各自治体の道路“改良”がこれらに輪をかけていると指摘する。

「米国や他の国々のような、標識や信号の設置を含めた正しい道路工学に基く設計基準の適用や、交通安全教育の実施、適切な取締りや処罰の履行を伴わない限り、ペルーの交通事情は改善されないままでしょう」

このことから同専門家は、運輸のみを管理するリマ・カリャオ統合交通局(ATU)とは別に、無秩序で危険な全国の交通体系を技術的に解決する糸口となりえる、国家道路交通安全庁の創設が喫緊の課題と指摘している。

「このようにして(新庁を通じて)、チリで運用されている標準設計を採用すれば、首都圏4000か所の交差点を1か所当たり1万5000ドルという低コストで改良することができるでしょう。4年の工期で合計6億ドルかかりますが、リマの渋滞による年間60億ソレスの損失から見ればほんの一部に過ぎません」

市民交通十字軍協会が起草した関連法案はすでに交通通信省の手元にあり、現状ではなんとか予算の目途もついていると専門家は述べた。

事業主体への制裁権限も

ペルー自動車協会では、チリの国家交通安全委員会(CONOSET)やアルゼンチン交通安全庁、エクアドルやコスタリカの交通庁と同様の組織創設を目標にしている。

「秩序ある交通体系にするためには、誰かが率先して監督しなければなりません。交通事故を防ぐには、きちんとした道路設計が必要です」新庁に関しては、(道路工事を管轄する)交通通信省ではなく、首相府(内閣府)が新庁を直接管掌すべきとしている。

また新庁の機能については、交通事情の改善および道路安全設計の改良に向け必要となる法令の公布に加え、道路の施工や道路標識の設置に関わる事業主体を対象とした処罰の実施権限が付与される模様。

「ある自治体が不適切な工事を行った場合は、その自治体が責任を持って改善しなければなりません。ラ・モリーナ区のモニトール環状交差点がそのいい例で、適切に信号が配置された通常の交差点として設計していれば、今のような朝のひどい渋滞は起こらなかったはず。しかし、すでにラウンドアバウトが出来上がってしまいました」

マドリードとの比較

リマの過剰な車両台数を渋滞の要因と見る記者会見の質問について、マドリードの首都圏(605平方キロメートル)はリマ(731平方キロメートル)のそれと比べ若干狭く、かつ車はリマよりも多いが、リマのようなボトルネック状態の渋滞は記録されていないと専門家は答えている。

「マドリードの車は400万台、リマでは半分の200万台です。また、信号機の設置された交差点1か所における車線当たりの時間交通量は、マドリードが800~1200台、リマは400~600台になります。(リマの渋滞は)車両台数以外の原因が考えられます」

統合交通管制センターの設置

同専門家はさらに、新庁には各交通当局との機能的な関連性を持たせると説明。「これはすなわち、自治体の交通責任者が、行政上も機能上も新庁に従属するということになります」

また新庁は、公共交通機関そのものや交通違反には直接関与せず、全国の陸上交通の発展と安全推進への関与が予想されるすべての公共機関に対し、道路の設計、監督、法制化、監査および制裁に関する案件についてのみコミットすると強調した。

「都市部の交通問題は、善意だけでは改善されません。道路設計の不具合や誤った信号の配置も渋滞の原因になります。チリのように、すべての信号を制御できる統合交通管制センターの設置がリマにも求められています」

同専門家は、リマや全国の交通関連規則整備に向け基本的なガイドラインを決定する独立新庁の創設にあたり、今回の統一地方・自治体選挙(10月2日実施済)を絶好の機会と捉えている。

(ソース: Andina 09/10/22)