IX Salón del Cacao y Chocolate Perú 2018

7月19日~22日まで開催されたIX Salón del Cacao y Chocolate Perú 2018。ペルー国内のカカオ生産者とチョコレートメーカー、その関係者が一堂に集うチョコレートの祭典。併せてインターナショナルチョコレートアワード(ICA)・ペルー大会の審査も行われた。

この日のために来秘したチョコレートソムリエでICA審査員であるさつたにかなこさんのご協力で、ICA審査委員長のマーティン・クリスティー氏と、ゲストシェフとしてホワイトハウスに招かれた初のラテンアメリカ人女性であり、南米産カカオの発展に最も貢献しているというマリセル・プレジィラ氏に話を聞くことができた(さつたにさん、ありがとう!)。

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長らくメソアメリカが原産といわれていたカカオだが、近年の調査でその起源はエクアドルからペルーにかけてのアマゾンエリアであると分かったそうだ。エクアドルでは5500年前の、ペルーでは5000年前の遺跡からその痕跡が見つかっているという。ペルー原産の食物は数多あるが、カカオもだなんて!「この国の生物多様性は傑出している」というマリセルの言葉を実感。ペルーってなんてすごいんだろう。

今回のイベント会場となったCCLの3階で行われたICAの審査の様子。世界各国から集まったチョコレートのスペシャリストたちが、黙々とチョコレートを試食・ジャッジしていく。その数100種類以上、しかも一次二次と審査に受かったものをまた食べ比べて・・・チョコレートへの飽くなき情熱と使命感、強靭な胃の持ち主でないととても務まらない。

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さつたにさんと、同行された阪急百貨店フードマーケティング商品部バイヤーの高見さゆりさんが審査に入られるというのでいったんお別れし、会場を見て回った。初日の午前中から会場は大入り。今回はベルギーを招待国とし、ベルギー産チョコレートや同国のショコラティエを招いて、デモや講演会などが行われた。当初の宣伝ではエクアドル、ブラジル、コートジボワールにしかないという希少なカカオ、ルビーチョコレートがペルー初お目見えとあったのに・・・なかった。スタッフ曰く「初日だからね~、間に合わなかったのよ」と。でも最終日までなかった気がするが・・・ペルーってやっぱり違う意味でもすごいww

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去年雑誌Preciousの取材で知り合ったShattellのリシィ・モントーヤ。彼女のチョコレートは2017年度ICAのロンドン本大会で世界一に輝いた。今やペルーにおけるBean to Bar界の顔ともいえる存在だが、驕ったところはまったくない。今回も当日朝からずっと自社ブースに入って、丁寧に顧客対応をしていた。

約150ものカカオ&チョコレート関係者が出店する大イベント。会場ではほとんどのブースで試食ができるのだが、これが結構辛い。カカオ50%程度の甘いチョコレートなら口に入れてすぐ好き嫌いを判断できるけれど、70%以上となるとやはりその香りや口どけなど余韻も楽しみたいものだ。ところがその多くは「ほら、これも食べて、こっちも食べて」と次々手渡しては「美味しい?」と聞いてくる。そんなの分かるわけないじゃない!

ペルーでは、カカオ農家自身が自分のカカオを使って手作業でチョコレートを生産しているケースが少なくない。カカオの品質は素晴らしいが、作り手が“本当に美味しいチョコレート”を知らないケースも残念ながらある(これはペルーのコーヒー生産者にも言えることだが)。本物を追求するには作り手の感性や素材の良さだけでなく、他者を知る努力も必要だ。でもそこまでできる農家は少なく、それが接客やパッケージにまで現れてくる。一方過去のICAで何かしらの賞を取っているようなメーカーは、その対応もまったく違った。切磋琢磨できる(余裕のある)メーカーはどんどん世界レベルに、そうでないところはそれなりのまま。ペルーのSalón del Cacao y Chocolateはまだまだ玉石混合なんだ。これは私にとって面白い発見だった。だってここから自分好みの“玉”を見つける楽しみがあるのだから!

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3日目はカカオアルンの米津社長と、ショコラティエの高橋さんと一緒に会場を回った。やっぱり知識のある人と一緒に見て回るのは面白い。チョコレートは嗜好品だから各々が好きなように楽しめばいいのだけれど、カカオ生産国とはいえこれだけのBean to Barが一堂に介す機会は滅多にないのだしね。しかもお2人は「新しいカカオの発見」を念頭に来秘しているから、カカオのプロバイダーや機械メーカーのブースも丁寧に見て回る。カカオニブも結構食べましたよ~!美容効果もばっちり。今回個人的に初めて“美味しい!”と思ったカカオニブに出会えました。ずっと「この苦さを人は美味しいと表現するのか?」と疑問に思っていたので・・・ウカヤリのRiver Cacaoのカカオニブ。あれ、購入したかったなぁ。

この日の夜にICAペルー大会の表彰が行われるとあって、この後さつたにさん、高見さんと合流し会場へ。高見さんからチョコレートのことや、阪急百貨店のチョコレートに対する取り組みについてもお話を伺った。今年のバレンタインデーに開催された阪急百貨店のイベント内容の濃いこと!うわー、参加したかったな~。これはぜひ足をお運びいただかなければ。来年のバレンタイン前に改めてご紹介しよう。

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生産国が盛り上がってこそ、世界のチョコレートは進化する。そういう意味ではパリのSalon du chocolat(サロン・デュ・ショコラ)より、生産国ペルーのイベントはよほど面白い。「これだけふんだんにいろんな種類のカカオポッドを展示できるのって、やっぱり生産国ならではですね」とは米津社長の言葉。後はペルー側がこの恵まれた環境をどこまで生かせるかだな~(これが一番の課題か/笑)。

4日間のイベントに延べ1万8000人が来場し、1000万ドル分のも商談が発生したというIX Salón del Cacao y Chocolate Perú 2018。入場料たった10ソレスでこれだけの体験ができるのだから、在住者も旅人も訪れる価値あり!来年は事前にご紹介するのでお待ちあれ。以上、備忘録もかねてのご報告でした。