母の日狂騒曲と桜の塩漬け

この春の日本滞在の想い出に、桜の塩漬けを作ってみた。義母宅の庭にある桜で、寒緋桜や河津桜のような濃い桃色だが、花は一重でソメイヨシノのよう。あの家が完成した20数年前にだんな自ら苗を植えた、家族にとって思い出の桜だ。

先日の母の日。時差を考えて前日の夜(日本の日曜の朝)に義母に電話したが、残念ながらお留守だった。仕方がないので翌朝(日本の日曜の夜)に電話。ただこの時は私達が外出予定だったので、申し訳ないとは思いつつほんの一言二言で終わってしまった。

ペルーの母の日はそりゃあ賑やかだ。どのカフェやレストランも、母や妻に食事をプレゼントする家族で終日いっぱいだし、スーパーや市場への買い物は男性比率が俄然高くなる。その日のニュースは番組イチオシの素敵なママの紹介や、全国各地の母の日イベントの話題ばかりで、それ以外は交通事故のニュースしかないという超浮かれぶり。いい加減疲れてくる。母の日を祝うこと自体は純粋に良いと思うが、関係ない人を巻き込みすぎ。

夜になってもまだその余波は続いていた。終日外出していたアパートの隣人たちが、夜になってからアパート内Whatsppで互いに「Feliz día de la Madre!」とメッセージ交換をし始めたのだ。おいおい、いつまでピコピコやり合うんだよー!もう9時過ぎだよー!

いい加減イラッとしていたところ、これまた携帯がピコンと。今度は義母からのメールだった。母の日コールを喜んでくれたのだろうか、それともつい数週間前まで一緒にいたのにと寂しくなったのか、桜にちなんだ一句を送ってきた。個人的な作品ゆえ転記しないが、今回の日本滞在で桜を満喫した2人(だんなと私)がペルーへ去ってしまったという内容だった。

ぽろり。

正直、上手とは思えない。桜の文字が2回も入っているし、中途半端に字余りだし。でもWhatsppにうんざりしていた私の気持ちを、見透かされたような気がした。お義母さん、ありがとうございます。一緒にいれずすみません。そして我が母にも申し訳ないと思う。自分たちが好きで海外に出てしまったから、この日を一緒に祝えないだけだ。自分は関係ないと思うのはわがままというもの。

日本なら「母のいない人は?」「子供を生めない人は?」「独身は?」と余計なことをいう人もいるだろうが、まーここまで国を挙げて祝われちゃ一緒に踊らにゃ損ソン(笑)。かくいう我が家も「Feliz día de la Mujer」として、しっかり飲んでいたのだけど。来月の父の日は幸か不幸か母の日ほど国中が狂喜乱舞することはないが、それはそれでまた暑苦しいメッセージが飛び交うのだろう。我が家はまた「Feliz día del Hombre」として飲むことになるんだろうな。天にいる父や義父にも一献捧げながら。