アンデスの耳付き帽「チューヨ」の起源とその歴史

色とりどりの可愛いデザイン、先のとがった耳当て、そして個性あふれるウールの飾りがチューヨを洗練されたアクセサリーに変えました。ジョン・ガリアーノによるディオール2022年オータムコレクションへの出品を始め、数々の有名デザイナーがペルーのチューヨを題材にしています。キャメロン・ディアスやアントニオ・バンデラス、ザック・エフロン、ニッキー・ジャム、さらにはローマ教皇フランシスコまでもがこの帽子に驚き、そして感動しています。チューヨがペルーのアイデンティティと同義であることは間違いありません。

ペルー南部、タクナ州出身の歴史家アルトゥーロ・ヒメネス・ボルハ(1908-2000)によると、スペインの縁なし帽子「birrete(ビレテ)」が元になり、文化的な融合を通じて耳当てや飾り房、さらに土着のデザインが加えられたものがアンデスのチューヨだといいます。一方、帽子の着用はアンデス世界において視覚的な言語としての意味があったとする説もあります。チューヨの収集家ロージー・バーンズは、2016年にリマの民俗芸術博物館で開催された「チューヨ、ペルーの象徴」展で紹介されたチャビン遺跡のカベサ・クラバやナスカ文化の首級、パラカス文化の頭蓋変形や穿頭、アマゾンに暮らすシュアル(ヒバロ)属の乾首に加え、数々の土器や刺繍への表現からもこの説は明白だとしています。

英BBCによると、「チューヨと同じように、インカの人々はそれぞれが所属する地域固有の記章が入った頭飾りを身に着けていた」ようですが、チューヨには地域によって独特の意味があります。例えばプーノ州のタキーレ島では、男性が自らの創造性や夢、願望から既婚・未婚の別まで表現できることから、チューヨは地域の社会構造における重要な役割を担っています。また、チューヨは若いカップルの出会いにも影響をもたらします。島の女性は男性がチューヨを上手く編めるかどうかで結婚相手を選ぶのです。結婚や離婚、島における社会的地位の変化など、チューヨのデザインはそれを身に着ける男性の生涯を通じて変化します。クスコ州キスピカンチ郡のオコンガテ地区でも同様に、男性が結婚の意思を示すため、富や経験を表す模様入りのチューヨを被ります。

スペインの侵略と共にもたらされた技術(かぎ針編み、レース編み、編み針など)によって、チューヨ編みが始まりました。現在ペルーで最も古いかぎ針編みの痕跡は、トルヒーヨ近郊のコロニアルな村、マグダレーナ・カオ・ビエホで見つかった1578年のものとバーンズは言います。「チューヨのイコノグラフィーはシンプルに見えますが、編み手の出身地や野心、願いなどが反映されているのです。パリャイ(複合的な図柄)は編み手の世界の縮図であると共に、確たる念を表現する手段なのです」

かぎ針編みは、ワンカベリカやアヤクチョ、プーノ、クスコを始めとするアンデス高地で日常的に行われ、そのデザインには編み手が想像するイメージや神々のシンボルが反映されています。

防寒用にチューヨを被ったり、誰かにプレゼントしたりする時には、その背景にある奥深い歴史も思い出してあげてくださいね。

(ソース: ペルー貿易観光促進庁/Promperú)

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