消えるもの、残るもの

ネタ探しをしていたら、口コミ評価がすこぶる高いアマゾンの民芸品店を見つけた。先日近くを通ったので、ちらっと寄り道。休憩中だったにもかかわらず、快く案内してくれた。

店内には女性オーナー自らアマゾン各地を訊ね、生産者の顔を見てから購入したという素朴な土器がたくさん並んでいる。オーナーは不在だったが、代わりに彼女のご主人が親切に対応してくれた。

店の主力商品は、ロレト州のとある村で作っているという真っ黒な土器。壁に貼られた大きなパネルの中でほほ笑む、おじいちゃんマエストロの作品だ。しかし彼の子供たちは跡を継ぐ気がないという。毎日汗水たらして粘土をこねるより、モトタクシーを運転していたほうが儲かるらしい。

Ruraq Maki”に参加することを勧めたら、「実は文化省に相談したことはあるんだよ」とご主人。「このマエストロはもう何十年も同じ方法で作ってるんだ。土器をいぶす時だって、マスクなんか付けたこともない。煙がどうのって言われても、広々とした田舎で周囲に住宅地なんてないし、ずっと自由に作ってきた。彼は確か86才くらいだと思うけど、今もすこぶる元気さ。なのに今はなんでもエコや持続可能性だろう?文化省は環境がどうのとか、煙による健康被害がどうのとかうるさいし。彼らの基準に合わなきゃ斬り捨てだよ」

市場へのアクセス方法を持たないが故に廃業する、地方の名工は少なくないだろう。泥や木材など天然資源の減少と後継者不足が重なって、静かに消えていった工芸品もあるはずだ。その一方で、この店のオーナーのような救いの神もいる。その歴史や価値を認め、一般に広めようと努力する人々。生産者から公正な価格で商品を買い取り、業者を介さず自分たちで販売する。彼らの活動はなかなか報われないだろうけれど、その姿勢があの口コミ評価につながっているんだろうなぁ。

もちろん私も星5つでコメントしておきました。あと私にできるのは、観光情報として書くことかな。個性が強いアマゾンの土器は万人受けするものではないけれど、ウケるものだけを紹介するのもつまらない。ペルーの現状を知ってもらうための観光情報ってのもありだよな、と思った次第です。

Amazonka

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