尺八奏者 小濱明人@ペルー

去る9月29日~10月1日の3日間、リマの国立大劇場で開催された「Sonidos Vivos」(生きた音楽/以下SV)は、全席ソールドアウト・全日スタンディングオベーションという大成功のうちに幕を閉じた。SVは世界トップレベルの音楽家が集い、ルーチョ・ケケサナが目指す新しいペルー音楽をともに創り上げるというプロジェクト。今年で10年を迎えたこのプロジェクトに2015年から参加しているのが、尺八演奏家の小濱明人さんだ。コンサートを無事終えほっと一息の小濱さんに、SVやペルー音楽について話を伺った。

小濱明人 プロフィール
香川県高松市生まれ。古典を石川利光、民謡を米谷智に師事。NHK邦楽技能者育成会第46期修了。NHK邦楽オーディション合格。第2回尺八新人王決定戦優勝。
※尺八奏者 小濱明人ホームページより。

K:尺八を始めたきっかけは?
O:高校のころから民族音楽が好きだったんです。当時NHKラジオで放送されていた「世界の民族音楽」という番組をずっと聴いていましたね。POPも洋楽も好きだったけど、なぜか民族音楽に惹かれて、気が付いたらとても好きになっていて。民族学というか、人類学的なものに興味があったんです。大学で民族楽器のサークルに入りたかったけどなくて、色々探しているうちに最終的に行きついたのが和楽器だったんです。

K:伝統楽器の演奏家は子供のころから始める人が多いのに、大学からとは珍しいですね。
0:民族のもつ“生み出す力”というか、音の原点みたいなものに憧れがあったんです。尺八を始めた時、自分の中にある(日本人としての)血を呼び覚ますような感覚があったんですよ。尺八にハマったというか。SVも自分が尺八奏者(日本の伝統楽器)のプロだったから参加できたわけで、感動しますよね。

K:「世界の民族音楽」を聴いていたとのことですが、ペルーの音楽も聴いていましたか?
O:ペルーの、というよりフォルクローレというくくりで聞いていました。あとはアフリカや東ヨーロッパ、インド、オーストラリア、アジアなどです。


K:実際にペルーの音楽を演奏してみて、いかがですか?
O:音階は難しくないんですが、リズムが難しいですね。日本の古典音楽には3拍子というのがないんですが、ペルーの音楽にはそのリズムが多くて。フォルクローレをそんなに難しい(音楽)とは感じていなかったんです。なのに、ここで楽譜を読んでもなかなか理解できない。ルーチョが作曲する音楽にはアンデスだけでなく、アフロペルーの音楽が入っているんですよね。でも私はムシカ・アフロペルアーナを聞いたことがなかった。自分は全然知らなかったんだなぁって思いました。

K:SVでのセッションはいかがですか?
O:他国のメンバーと一緒に演奏できるのは無茶苦茶嬉しいですね。民族音楽が好きだから、ダン・バウ(ベトナムの一弦琴)が横にあるだけで楽しいし、聞き入っちゃいます。たくさんのミュージシャンを知っていますが、SVのメンバーは相当レベルが高いですよ。ルーチョの音楽はペルー音楽といってもフュージョン的なもので、ペルーの古典だけでなくさっきお話したアフロペルアーナやジャズ、西洋音楽を理解していないと演奏はできない。みんなそれを理解しつつ自分たちを表現するのだから、素晴らしいと思います。

K:今回の演奏で特に気をつけたことは?
O:SVの曲はルーチョがすべて作曲していて、事前に送られてきたコード譜と音源を元に譜面を起こしています。彼がケーナで作ったメロディーを尺八やフルートに置き換えるので、普通に吹くとどうしてもケーナっぽくなってしまう。そこをどうやって日本的に、尺八らしさを出しながら演奏するか苦心しました。ルーチョも「どんどん尺八っぽさを出して」っていう指示でしたし。尺八にしか出せない音を目指しました。


K:SVをきっかけに、もっとペルーの音楽を聞いてみよう、演奏してみようとと思いますか?
O:ルーチョがどういうルーツなのか知りたいですね。彼の音楽のどこまでがペルー音楽で、どこから彼の音楽なのか?その差がまだ分からないんです。他のメンバーには10年の歴史がありますが、私は最近参加したところだから、これからですね。

K:SV(ペルー音楽を世界の楽器で演奏)の日本版をする可能性はありますか?
O:考えたこともなかったです。もし私が世界の楽器と一緒にやるとしたら、日本に限定されない新たな音楽を作ってみたいと思います。そう考えるとワクワクしますね。

この後も色んな話で盛り上がったものの、残念ながら時間切れ。10月2日にペルーを発った小濱さんはNYへ。そして10月11日は日本で早速コンサート!尺八のイメージが大きく変わるはず。お時間のある方、ぜひ足をお運びください!

LOTUS POSITION with 山下洋輔 東京公演
場所:渋谷区桜丘JZ Brat
開場:17:30
開演:1st. 19:30、2nd. 21:00

モバイルバージョンを終了