いいタクシスタ・悪いタクシスタ その1

空港へ行くためにタクシーを呼んだ。何台ものタクシーが地図上で蠢く姿は虫のようであまり好きではないけれど、呼べば数分でやってくるのだから、便利な世の中になったもんだ。

依頼を受けたタクシーが我が家に近づいてきた。地図を見ていると時々妙な動きをする奴もいて、「こいつはハズレかなぁ」なんて思う時もあるのだが、今回のはさくっと到着した。ドライバーに荷物を渡してトランクに収納してもらい、後部座席に乗り込んで、「空港まで」と告げる。アプリには出発地と目的地を入力しているのだから、本来ならそんなことを言う必要もないはずだ。でもまあそこは、挨拶がてらということで。

ところが。なぜすぐ発進しないのだろうと思っていたら、そのドライバーは何やらモゴモゴ言っている。曰く、「今日は免許証がないから、空港には入れないんです」と。ちょっとー、いーじーさーん、あんたんとこの契約ドライバーは免許不携帯ですよー。イライラしながら「じゃあなんで来たのよ。携帯に“空港”って出てたでしょう?」と文句を言うと、「私の携帯には行先は表示されないんですぅ」とのたまうではないか。はぁ?空港までの料金だってちゃんと表示されたし、だいたいなんでこの荷物を見た時に確認しないのよ。「すみませぇぇん」もうっバカッ!

空港に入れないんじゃ仕方がないと、別の配車アプリでタクシーを呼んだ。次にやってきた若いドライバーは、荷物の収納どころか運転席から降りようともしない。しかも「カーナビの指示だから」と、朝の通勤ラッシュ時間だというのにセントロへ突入してしまった。bujiazo(ガラス窓を割って荷物を盗む強盗)でもいたらと思うと落ち着かない。足元に置いた荷物を上着で隠し、信号で止まるたびに周囲の歩行者を睨みつける。空港に着いた時も運転席から降りようとしないので、思わず「荷物出してよ!」と言ってしまった。日本の人が読んだら「嫌な女だな」と思うだろう。はい、嫌な女ですよ。でもこんなのペルーじゃあり得ない。

流しが危険なのは重々承知しているが、配車アプリのドライバーもほんと大したことない。昔はリマ中の抜け道を熟知しているプロのタクシスタにもよく出会ったけど、そういう職人肌の人はどこへ行ってしまったのだろう。

時間に余裕があったから問題なかったが、やっぱり気持ちのいいドライバーに当たりたい。だからペルー人は信頼のおける個人タクシーが好きなのだろう。それでも実際に利用しているのは22%だけということを考えると、そもそもいいタクシスタ自体が少ないに違いない。親切過ぎてもまた困ることもあるのだが・・・。それはまた次回に。

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