日本のファッション文化をペルーへ BANSAN

日本の外務省が広報文化外交の一環として実施している「日本ブランド発信事業」。今回、その海外派遣専門家として来秘したのが、若き女性デザイナー伴真由子さんだ。前回の日本酒紹介に続き、今回が2回目。しかもこう言っちゃぁなんだが、ここペルーでファッションという大胆な切り口。どんな内容になるかと、興味津々だった。
最初に行われたのは、「Una mirada a la moda japonesa y su historia a través de Bansan」というセミナー。PROMPERÚの会場は若い女性を中心とするファッション関係者が150人以上が集まった。伴さんのプロフとブランドテーマの紹介、どこからアイデアを持ってくるか、日本ならではの細やかなモノづくりについてなどをスクリーンを使って説明し、最後に簡単なファッションショーが行われた。

セミナーに関して思うところは色々あるが、一番勿体なかったのは、伴さんが受賞した装苑賞の価値を伝えなかったことだ。あのKENZOやKANSAI、HIROKO KOSHINOを輩出した日本を代表する名門コンテストであると、なぜ言わなかったのだろう。自分の能力をアピールし尊敬を集めてこそ、聴衆はその人物の言葉に耳を傾ける。感性がモノをいう世界に正解はなく、誰もが「彼女より私のほうがもっと優れている」と思っている。だからこそまずはその“実力”と“実績”を示すべき。でないと日本の文化なんてとても伝えられない。

翌日伴さんはアレキパへ行き、Michellなどのアルパカ毛メーカーを訪問したそうだ。リマではまたイテサの工場やガマラ見学のほか、リマの大手モード専門学校 Nina designでも講習会を実施。お題は伴さんが持参した着物生地を使って、自分だけのオリジナル付け襟を作るというもの。身体の薄い日本人と違い、凹凸の激しいペルー人が首を絞めつける襟なんてものに注目することは余りないだろうから、これは逆に面白いと思った。「ちょっとゴージャスなネックレスを作る感覚で」と言えば、もう少し興味を引いたかもしれないけど。

学生たちは伴さんの見本を手に取りながらデザインを始め、型紙を作り出した。「ペルーの人はもっと感覚的に作っちゃうのかと思ったけど、意外に細かいんですね」と伴さん。時間がもう少しあれば、もっと互いに刺激し合えたんだろうな。

伴さんが見本で持て来た付け襟は、シンプルな形ながら、端を結ぶことでちょっとした動きや立体感を出すようになっていた。見本を見ながらじっくり考えるのはいいが、ぜひ生地の織りや質感、和の模様を活かしたデザインを・・・と思ったが、そこまでは無理っぽかった。ちなみに写真中央の髪をアップにした女性は、横塚永美子さん。C.C. Arenalesにショップを持つほか、繊研新聞にも寄稿するファッションのオーソリティ。彼女についてはまた今度♪

盛りだくさんのスケジュールの中、大使公邸でのパーティーにも出席。こちらの来客はペルー・ファッション界のプロたちが多く、きらびやかな会となった。彼女の作品を手にした人たちからは、その仕上げの細やかさに称賛の声が上がっていた。さまざまな異素材を組み合わせた手の込んだ作品であることにも、関心を寄せていたようだ。ペルーにはアルパカ毛とピマコットンを妄信していて、「素材がいいからこの商品もいいんだ」と勘違いしてるような人が多いように思う。確かに素材は大切だけど、“衣料”と“ファッション”は別物だ。ペルーを代表するデザイナー、Jose Miguelも、Nina designの学生たちに異素材の組み合わせの重要性を熱心に説いていた。彼女たちが何かを掴めていたらよいのだが。

おじいちゃん・おばあちゃんっ子で、古いものが大好きという伴さん。向田邦子シリーズでは、彼女が好きだった羊羹なんかもモチーフに使ったとか、面白い話も伺えて個人的にはよかった。「またこうした機会があれば、ぜひ海外に出たい」と意欲的なところもいい。今後の活躍に期待しています。

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