SIGO SIENDO! チョロのタップ

「チョロのタップを観に行きませんか」と声をかけてもらった。ペルーのカホンやマリネラが身近になって以来、あの軽快で力強いリズムがとても好きになっている。ましてや、ただのタップではなく「チョロ」と。そこを強調するには、何か理由があるはず。有難くご一緒させて頂いた。

Antonio Vílchez その公演は、サパテオ・アフロペルアーノや北米タップ、ヒップホップやワイノを織り交ぜながら、ペルー人のアイデンティティを模索するという創作劇だった。ペルー人とは誰なのか。移民国家であり、黒人や中国人など奴隷として連れて来られた人々をも内包するペルーで、一言にまとめるのは難しい。

Antonio Vílchez の生徒たちそんな中での今回のテーマが「cholo/チョロ」。チョロとは先住民とスペイン人の混血、中でも「都会に暮らすアンデス出身者」をさす。代々リマに暮らす白人層に言われれば、「田舎者」「都会にそぐわぬ邪魔者」というニュアンスだろうか。

チョロのタップ魑魅魍魎が跋扈する大都会に翻弄される地方出身者たち。特に二世、三世のアイデンティティの喪失感は半端ない。リマ生まれなのに、都会人にはなりきれない。アンデスの暮らしは知らないのに、ワイノを聞けば血が騒ぐ。自分は何者かと問う中で、結局酒を飲んだり博打をしたり、金と力と見得に溺れ、そしてただ死んでいく。

演出&主演のAntonio Vílchez と彼の生徒たちの間には、素人目にもはっきりと分かる技術差があった。曰く、2年前の公演では、Antonioは超絶技巧タップを3時間も踊り続けたほどの人物だという。うーん、そっちを見たかったなぁ。でもそれを見越しての演出だったのだろう、これはこれで十分面白かった。

「Sigo siendo/私は(ここに)居続ける。私は(私として)あり続ける」ペルー民衆の力強さと泥臭さ、喜びと笑い、単純さと遺伝子の奥深くに染み付いた哀愁。その一端に触れる作品。1月12日20:00からも、同公演あり。チケット30ソレスはお値打ち。興味のある方はICPNAへどうぞ。