義井豊写真集「乱反射する風景」

2014年9月、ペルー在住のカメラマン・義井豊氏の写真集「Reflejo en el Paisaje(乱反射する風景)」が、ペルー全国学長評議会出版局から出版された。140ページ以上に及ぶこの写真集の編集は、歴史学者・人類学者であり、ペルー最高学府の一つサン・マルコス大学名誉教授でもあるLuis Millonesが担当。その他、Samuel Matsuda(作家・政治アナリスト)やCarlos Runcie Tanaka(陶芸家)といった重鎮たちの支援によって、ペルー出版史上初の日本人写真家による作品集が誕生した。氏のこの国に対する真摯な眼差しとその写真が彼らの心を揺さぶり、今回の出版を実現させたのだ。

「シャッターを切る度に、ホンモノとは何か、それはどこにあるのかを問い続けている」と言う義井氏。同じ絵でも、楽しい時と哀しい時では見え方に差異が生じる。見る人によって、見られる側は変わる。見る人の視点やポジションに影響されてしまう。目に映る風景は一つではない。「風景は思想」と氏は語る。

また「アンデスの先住民は、踊る時その衣装に小さな鏡をつけるんです。その鏡が太陽を反射させる。それもあちこちに向かって。人々は太陽になりきって相手に向かって踊るんだけど、光はそれこそバラバラに散ってね。タイトルにはそのイメージも重ねています」とも話してくれた。照り付ける太陽の下、大地の女神パチャママの腹の上で一心不乱に踊る人々の姿が目に浮かぶようだ。

写真集にはペルーの風景と日常、そして子供たちの写真が数多く掲載されている。切り取られた写真には、2つの相反するものが同居している。本物と偽物、幸福と悲哀、希望と不安、そして生と死。その中で氏は「写真が捉えた、おそらくつかの間の喜びが、本書によって永遠のものになることを願いたい」と締めくくっていた。

また、本書に掲載されている義井氏の写真への想いと、ワッケーロ(盗掘者)アンヘル・パコとその家族の物語も秀逸だ。アンヘル・パコの話は、読み手の立ち位置によってそれこそ全く違った感想をもたらすだろう。40年もの長きに亘ってペルーを見つめ続けてきた、義井氏ならではの言葉が刻まれている。本誌はスペイン語だが、日本語別冊も用意されているのでぜひお読みいただきたい。

「Reflejo en el Paisaje(乱反射する風景)」の発行部数は500冊。日本での販売も予定されているので、当地での扱いはおよそ200冊になる予定だ(日本での販売については追ってご紹介します)。発行部数の少なさはペルー出版界の習慣に起因するもので、当地では普通のことだが、それだけ希少価値が高いとも言える。言ってしまえば、この国では欲しい本はその場で買うべし、でなければ次はもう入手不可能という訳である。

ペルーを愛する人はもちろん、ペルーに懐疑的な人でもいい、一人でも多くの人々に手にしてもらいたい珠玉の一冊。見る人の数だけ、義井豊という写真家の物語が紡ぎ出されていくことだろう。

■「Reflejo en el Paisaje(乱反射する風景)」取扱い店■

★Poco a Poco★(日本語別冊付きをお求めの方はこちらへ)
住所:Av.La Mar 2358 San Miguel – Lima/9:30~18:30(日曜休)
電話:(01)452-0404(日本語可)

★Libreria Sur★
住所:Av. Pardo y Aliaga 683, San Isidro – Lima/10:00~21:00
電話:(01)422–5307

★Libreria Cultura Peruana★
住所:Jose Galvez 124, Miraflores – Lima/9:00~20:00
電話:(01)444-5190

★Museo Larco(ラルコ博物館)での取扱い決定!★1月9日追記
住所:Av. Bolivar 1515, Pueblo Libre –  Lima/9:00~22:00
電話:(01)461-1312
※ラルコ博物館には日本語別冊も置いてあるそうです。

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