ああ、山本リンダ

朝、だんなが朝食のパンを食べながらぼそっと呟いた。「そういや、山本リンダってどうしてるのかな」数年ぶりに聞いたその名前に、朝から二人で盛り上がってしまった。

wikiによると「リンダ」は彼女のアメリカ人の父親が付けた愛称だという。lindo/lindaはスペイン語で「可愛い、きれいな」という意味だ。彼女の父親はラテン系だったのかな。きっと幼い娘を「Mi linda(ボクのかわい子ちゃん)」と呼んでいたのだろう。

「山本」は彼女の本名・旧姓だそうだ。日本の名字としてはあまりにも一般的な名字に、スペイン語関係者以外当時ほとんどの日本人が耳にしたことがなかったであろう「リンダ」という
インパクトのある愛称を合わせて芸名としたところが素晴らしい。きっと他にも様々な芸名が候補に挙がったと思うが、変に捻らず、余計な小細工をしなかったところがよい。

例えば、「原田リンダ」じゃ「パンダコパンダ」みたいで座りが悪いでしょ。誰が決めたか知らないが、このネーミングセンスに脱帽である。

私にとっての山本リンダは、兎にも角にも「狙いうち」だ。まだ幼かった私は、おへそを出したセクシーな服装で腰を振りながら「ウララ~ ウララ~」と歌う彼女がかっこよくもあり、少し怖くもあった。大体、「おへそを出したら風邪をひく、雷様に盗まれる」と教えられてきた昭和な私にとって、胸は肌蹴ているわ、腹は出すわ、パンツの裾は裂けてるわじゃ、刺激が強くて当然だろう。その上「ウララ~」である。開いた口が塞がらないとはこのことだ。当時の子供はみんな、何かあると「ウララ~」と言っていたように思う。なんだか分からないけど、魔法の呪文だった。

70年代半ば、山本リンダの人気に陰りが見え始めたと同時に山口百恵や森昌子が登場し、80年代には松田聖子や中森明菜ら、若手歌手が歌謡番組を席巻した。90年代は私自身が仕事に明け暮れ、歌謡界への興味が無くなっていき、2004年にインドネシアに暮らし始めてからは、さらに関係ない世界となった。今は日本の芸能ニュースを見てもまったく分からない。Yahooのエンタメページを開くことすらない。

そんな私が、彼女の当時ヒットした曲の歌詞に目を通してみた。なんと我儘で、小悪魔的で、エロティックなことか。恋に生きる女、恋のかけ引きを楽しむ女、男を手玉に取る女、どん底の世界から男を踏み台にし自分だけを頼りにのし上がる女。まさに刹那なラテンの世界ではないか。ペルーに暮らしているからって周りにこんな女性がいる訳じゃないけど、テレビドラマはまさにリンダの歌の世界だし、「今、この瞬間に命を賭ける」的な人はそれこそごまんといる。当時は全然理解できなかったこの歌詞だが、今は懐にすとんと収まる。40年近くも前にこんな歌詞を書いた作詞家・阿久悠の才能に感服する。言葉を短く単純化するほど、難しい作業はない。

芸能界音痴の私がいうことではないが、今の歌手は皆同じで見分けがつかない。もっと彼女のように力強くて肉感的で、情熱的なオトナの女が出てくるといいな。「オトナ可愛い」とか、「どこまで往生際が悪いねん!」みたいな寝ぼけたこと言ってるうちは無理だろうけど。現在62歳の彼女はセクシーでとてもきれいだ。

これからも元気にウラウラして頂きたいものである。

“ああ、山本リンダ” への4件の返信

  1. すっごい、すっごい面白かった 
    最近読んだ読み物の中で一番ツボにはまって声だして笑いました。
    朝イチにしかも朝食中に思い出すなんて。。。リンダ感激してますよ。

  2. tommyちゃん、嬉しいわ♪笑ってくれてありがとう。私も「朝からなんやねんな」って思ったけど、話しているうちになんか盛り上がっていい朝を迎えたわ。tommyちゃんは若いから、あんまり彼女の印象ってないんじゃないの?私はあの「ウララ」が気になって気になって仕方がない年頃でした。

  3. 私が中学1年の時 平成元年夏か秋くらいに【ちびまる子ちゃん】がアニメ化されて、まる子がよくウララぁ〜♪とリンダの真似して踊るから、それで火がついて再び山本リンダがテレビで再熱した時でした。
    なつかしぃー ものまね王座決定戦とかでよく山本リンダの真似をやりだして。
    何て言うかテレビ番組に活気と熱気があった時代でした。

  4. 「テレビ番組に活気と熱気があった時代」、確かにそうだね。インターネットが普及してから、テレビとのかかわりもどんどん変わってしまい、今なんかテレビがなくても問題ないくらいだし。今の時代も私が知らないだけで、色んな芸能人が活躍してるんだろうけどね。昔ほど熱中することはもうないだろうなぁ。

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