ふと見ると、子供が見事な鼻水を垂らしていた。そばにいた母親が指で器用に鼻水を拭ってやる。「この子、風邪をひいてるの?薬は?」と尋ねたら、笑ながら「No hay money!(カネがないんだよ!)」と言われてしまった。「父親がいないのさ」「だからカネがないんだよ」「ねぇ、この中で独身男は誰だい?」ペルーのシングルマザーは逞しい。「今日は独身者はいないよ」と言ったら、太田さんに向かって「嘘つき~!」「独身男がいるって言ったじゃないか~!」と叫んでいた。夫と別れた。夫が死んだ。夫がシャブ中。夫が刑務所に入っている。そもそも夫などいない。誰の子だったかも覚えていない。それが日常なペルーの貧困地区。そんな中でしたたかに生きる母親たちがこの墓地の鍵を預かってくれているのかと思うと、不思議な気がした。