ピクちゃん電話

プリペイド携帯の場合、チャージせず一定期間放置するとその契約は自動的に解除され、その番号は再利用される。主に一時滞在者が使うことが多いプリペイド携帯。一つの番号が比較的短い期間に繰り返し使用されるため、間違い電話があってもおかしくはないのだが・・・

携帯を購入した翌日。まだ家族にすらその番号を伝えていないのに、電話がなった。

(私)　「・・・もしもし？」
(Ａ)　「ピクチャン、ピクチャン、○×▲☆■！」

う～ん、最初の電話が間違い電話ですか。しかも、言ってることがまったくもって分かんないし。東南アジア系言語、たぶんタガログ語とか？「ピクチャン」あての電話であることだけは分かるが、それ以上は何を言ってるのかさっぱりだ。うーん、困った、しゃーないなぁ。

(私)　「あのー、間違い電話ですが。」
(Ａ)　「アー・・・？アナタ、ピクチャン、チガウ？」
(私)　「違いますよ。」
(Ａ)　「アー・・・　スミ゛マセ゛ーン」

微妙なトーン。「間違い電話をしたら謝る」という日本的基本常識があるところを見ると、出稼ぎ系、客商売の女の子かもしれないな。まぁプリペイドだし、そんなこともあるか。この時はそんな風に思っていた。

数日後、また携帯電話がなった。

(Ｂ)　「×△★■！●▽☆×　ピクチャーン！」

あ、またピクチャンだ。困るなぁ、もう違うって言ってるのにぃ。

(私)　「あのね、間違い電話ですよ。もうピクチャンじゃないのよ」
(Ｂ)　「アー？ピクチャン、チガウ？アー、ス゛ミマ゛セーン」

うーむ、面倒くさい。っていうか、頼むよピクチャン、行き先くらい友達に伝えてから消えてよね。

また後日。

(Ａ)　「☆▽□◎××★□！ピクチャーン！」

またピクチャンだ～。もういい加減にしてよ～。それにこの声、たぶん一番最初にかけて来た子だ。まったく、なんで学習できないの？

(私)　「あのね、あなた、前に電話してきた子でしょ。もうこの電話番号はピクチャンじゃないって言ったでしょ？この番号、削除してよ。あと、友達にも伝えておいて。ピクチャンじゃないから！」
(Ａ)　「アー・・・　スミ゛マセ゛ーン」

うぅぅ・・・ちゃんと謝るところはいいんだけど、悪びれる様子はない。なんというか暖簾に腕押し。

またまた後日、電話がなった。しかも朝4時半！びっくりして飛び起きて、慌てて電話に出たら

(Ａ)　「キャハハハ！★◎□××▽！ピクチャーン！！！」

きーーーーっっっ！！！　殺すーーーーっっっ！！！

(私)　「もういい加減にしてよ！何時だと思ってるの？4時半よ、4時半！この電話、ピクチャンじゃないって言ったじゃない。なんで分からないの？ピクチャンはもういないの！どこかに行ったの！わかる？い・な・い・の！！もうかけて来ないで！！」
(Ａ)　「アー・・・　スミ゛マセ゛ーン」
(私)　「すみませんじゃないでしょ！もうピクチャンはいないんだからね！！」
(Ａ)　「アー・・・　ハーイ、ワカリ゛マシター」

泣ける・・・。

さて。先日インドネシア時代からの友達と久しぶりの再会を果たし、懐かしい話に花を咲かせていたところ、また一本の電話が。

(C)　「◎××▽★★★！○■△☆×！！ピーッ！！！」

あー・・・　まただよ・・・。しかし今回は今までと違い、切羽詰った声で一方的に捲くし立てるばかり。困っていそうなことだけは推察されるが、そう言われてもねぇ・・・。本当にピクチャンはどうしたんだろう？もしかして、お星様になっちゃったんじゃないだろうか。

同席の友達に電話を代わってもらった。インドネシア語に堪能な彼女が「Ini dari siapa？(どちら様ですか？)」と問うも、それに対して反応もなく、また英語にも答えずどうしようもない。仕方がないのでそのまま電話を切った。声も微妙に遠く、あれは国際電話だったのではと思ったりもした。

もしかしたら、私が「ピクチャンはもういないの！」と言ったから、それがピクチャンの母国(どこだ？)の家族に伝わって、慌てて電話して来たのかもしれない。もしくは借金関係とか。何にせよ連絡が取れずに困っている人がいるのだろう。ピクチャン、あなたは一体どこにいるの？星にならず、ましてや簀巻きで淀川になんてこともなく、元気でいることを願ってますよ。

久しぶりのインドネシア料理を堪能中の出来事でした。