Adios 野菜オヤジ

ペルーに暮らし始めてからというもの、ずっとお世話になっていた野菜オヤジ。もしかしたら今日で最後かなぁと思うことがあり、思わずキーボードを打っている。

これまで自宅でごく普通に和食を作ってこれたのは、野菜オヤジのおかげだ。日本野菜を扱うメルカドはうちから遠く、日々のものをわざわざ買いに行くのは面倒だった。昔はオヤジもまだまだ現役で、失礼な言動も多々あった。また一時はボケだか鬱だかで元気がなく、目が虚ろだったこともある。取材の時は、歯の抜けた口でニマニマしながら答えてくれた。いろいろあったが、売り手と客としての関係はまずまずだったのではないだろうか。

ところがこの1年ほどは、約束の日に来ないことが極端に増えた。客の都合や増減でルートが変わるのは仕方がないが、来ると言って来ないのは困りものだ。来ると言ったからその時間は外出せずに待っていたのに、明日来るって言ったから必要なものを買わずにいたのに、みたいなことが重なると、それがペルーだと分かっていても嫌気が膿のように溜まってくる。

そんな時に客の心をつかんだのがグラン・オロだ。米の品質は賛否両論だが、豆腐はとても美味しい。オヤジと同じ「西」マークなのに、なぜこんなにも違うのだろう?しかも安い。野菜も種類は少ないがオヤジより安い。米という主力商品を持つグラン・オロは、付属商品の価格をうまく調整できるのだろう。一方オヤジは昔からの手法を変えることなく、原価が上がればそのまま価格に反映する。

2週間前だったろうか、グラン・オロで買い物した直後にオヤジが来た。申し訳ないと思ったが、その時はインターフォン越しに断ってしまった。それに危機感を抱いたのだろうか、今日は朝9時にやってきた。ただ豆腐はすでにグラン・オロに注文していたので、野菜だけ買うことにした。でもやっぱり高い。オヤジに協力したいが、消費者としてはあまりにもばからしい。それでオヤジに「最近は他の業者があなたと同じように売りに来るんだよ。そっちはすごく安いんだよ」と言ったら、ものすごく不貞腐れて!「今は誰でもすぐ商売を真似するんだ」「●●産のきゅうりじゃなきゃ、苦くてまずいだけだ」とぶつぶつ文句を言いだした。だから言いたくなかったのに…。でも仕方がない。

これまで幾度となく交わしてきた「Hasta la próxima quincena(また2週間後にね)!」という挨拶を、今日はどちらも言わなかった。もう来ないかなぁ。それとも、忘れた頃にまたひょっこり来るかな?グラン・オロなら2ソレスで買えるゴーヤを、オヤジから3ソレスで買った。こいつはちょっと苦そうだ。