無残な廊下の壁

ラウル、2000年問題を吼える

その男、ラウル。彼はこれまで2棟ものアパートを“自分で”建てたそうだ。自慢気に見せてくれた携帯写真には、3~4階建てのなかなか立派なアパートが写っていた。「チームで造ったの?」「チームじゃない!俺1人だ!」と胸を張るラウル。さすがこの道36年の大ベテランである。

しかしほぼ文盲の彼に複雑な構造設計ができるとは思えないし、そもそもちゃんとした設計図を作ったかどうかも疑問だ。一体どうやって建てたのだろう。レンガを積むだけじゃなく、ちゃんと鉄筋も入れたかしら?最低限の強度は保たれているよね?

そんなことを思っている間も、壁の穴あけは続いた。タガネを叩く音が廊下に響くたびに他の箇所にも亀裂が入りそうで怖い。ただでさえ意味不明のヒビがあちこちにあるのに・・・。ため息まじりに「もうそんなに掘らないでよ」と言ったら、「なんでだ!」「大変な仕事だからか!」とニマニマするラウル。いや、大変なのはあんたであって、私は見てるだけなんだけどさ。

「違うよ。あまり掘ったら、壁が弱くなるでしょ。地震が来たら怖いじゃない」「地震は来ない!」「なんで?リマは近い将来地震が起きる可能性がすごく高いんだよ」「誰が言った!」「えーっと、地質学者?」「あいつらは嘘つきだ!」「なんで?ちゃんと科学的に調べてるでしょう?」「嘘だ、嘘つきだ!」

なんでこんなにムキになるのだろう。そりゃ地震なんて来ないほうがいいけど、何か地震学者に恨みでもあるのかしらん?あまりに嘘つき呼ばわりするのでその理由を訊ねたら、彼は手を止め、真顔でこう答えた。

「2000年になったら世界は終わりって言ったのに何も起こらなかった・・・みんなもう最後だって言ったのに、何も起こらなかったー!」

それは別でしょ~!

その男、ラウル。1999年12月31日によほど怖い思いをしたらしい。でもそれはコンピュータの誤作動云々であって、彼とは一番縁遠い世界ではないだろうか(もしくはノストラダムス系?)。何があったかは知らんし、聞こうとも思わないが、そんな彼が造ったアパートに耐震強度を求めたことを、心からお詫びします。

「ラウル、2000年問題を吼える」への2件のフィードバック

  1. ラウルみたいな人はどうやら気になります。私はずっと前、細部にこだわる人ですから、ガサツで大雑把な方を見ると「おかしいな」と思います。けど、どちらかというとその大雑把なところが羨ましい(笑)

    1. エンソさま。
      私もラウルのような人は羨ましいですよ。
      なんせ迷いがない。清々しいほどです。
      日本では周囲が絶対受け入れないでしょうけど、ここはペルーですからね。
      そういう点ではペルー人の懐の深さは見習うべきだといつも思います(笑)

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