ペルー大統領選挙 投票日前夜

閑散としたスーパーの酒売り場。黄色いテープがなぜか痛々しい。禁酒令をうっかり忘れていたのか、男性2人が酒売り場の前で途方に暮れていた。彼らのカートにはジュースやポテトチップスがたんまり。今夜はフィエスタの予定だったのだろうか?だったら気の毒な事だ。

明日はとうとう2016年ペルー大統領・国会議員選挙の投票日。選挙活動最終日の7日には、各候補たちが最後の支援を熱く呼びかけた。が、その後はどの会場もゴミだらけ。ポイ捨てが日常のペルーながら、あまりのひどさに当地新聞が取り上げる始末。次期大統領には「公共の場にゴミを捨てたら罰金」という法律をぜひ作っていただきたいものだ。

マチュピチュ以外ペルーに興味のない日本のマスコミも、数日前からポツポツと今回の選挙について取り上げ始めた。といってもそれはケイコ・フジモリが出ているからであって、彼女が泡沫候補だったら見向きもしなかっただろう。在住者としては寂しいが、まあそんなもんだ。

現在のところ、ケイコ・フジモリ対2位の決戦投票にもつれ込むことは必至。2位が誰になるかで、この国が大きく変わるかもしれない。右派寄りのクチンスキか、バリバリ左派のベロニカか。つい先月まではバレネチェアの名前も挙がっていたのに、今やどこ吹く風。候補者の浮き沈みが激しいところは、ペルー選挙の醍醐味と言えよう。

それにしても、極左が大統領になったら外国資本はみな撤収、税収が減って国の経済は停滞。結果的にみんな失業してろくなことはなかろうに、と思ってしまう私は短絡的だろうか。「失業も嫌だが、フジモリはもっと嫌だ」という気持ちは、もはや怨念の域に達している。でもそれだけならクチンスキでいいはずだ。左派が元気なのは、フジモリ憎しだけが原因ではない。ラテン世界と日本が本当の意味で交わらない理由の1つに、資本主義を拒絶するラテン諸国ならではの文化がある。植民地経験のない日本人にはなかなか理解しがたいだが、この混沌とした雰囲気こそがラテンアメリカの魅力なのかもしれない。

ペルーの今後5年間は、明日決まる。

1821年7月28日 ペルー共和国独立
1822年制議会選挙法 選挙権は21歳男子のみ
以降、選挙権は21歳以上、もしくは25歳以上の男子のみに限定。使用人でないこと、納税者であること、識字者であることなどの制限がその時々で加筆・変更される。
1896年 識字男性に選挙権
1931年 識字男性に被選挙権
1955年 識字女性に選挙権・被選挙権
1979年 識字規制廃止。非識字者は1980年の選挙で初めて投票した。選挙権は18歳からに変更。
村上勇介「ペルーにおける選挙制度の史的展開」より抜粋