マリネラの女王に選ばれた日本人女性

雄大な風景を目の当たりにしたとき、この上なく美味しい料理を口にしたとき、人はそれに「魅了された」という。「魅」とは「化け物・もののけ」、転じて「人の心を惹きつけて迷わす」という意味だ。一旦それに憑りつかれたが最後、逃れられなくなるということ。人生でそれほどのものに出会える人が、果たしてどれくらいいるだろうか。

先日、マリネラに魅了された日本人女性、佐々木絵里さんにお会いした。リマ某所で行われるマリネラ・コンクールのレイーナ(女王)を務めると聞いたからだ。レイーナはそのコンクールにおける象徴のようなもの。技術だけでなく、主催者側が「我々のコンクールの顔となるに相応しい」と思える人物でなければならない。マリネラに対する真摯な態度や、その情熱を買われた結果とも言えるだろう。あの頭上に輝くティアラは、マリネラに魅了された人にこそ相応しい。

マリネラを習い始めて4年という絵里さんだが、ペルーに来るまでその存在すら知らなかったそうだ。お子さんが習い始めたのをきっかけに、気づけば自分が虜になっていたという。現在は仕事と子育ての傍ら、2人のペルー人先生に師事している。

ペアで踊る舞踏の中でも、マリネラは女性がリードする珍しい踊りだ。愛情だけでなく、時には思わせぶりな態度を取りながら恋の駆け引きを表現していく。「首の傾げ方一つで雰囲気が変わるんです。coquetería(小粋さ、媚態)や picantería(辛辣さ、つれない態度)など、女性の表現力で見せる踊りですね 」と絵里さん。もともと演劇をやっており身体を使って何かを表現することが好きだったという彼女には、まさにぴったりだ。

この日2回のエキシビションをこなし、レイーナという大役を見事に果たした絵里さん。前ブログでご紹介した瀬尾有紀さんもそうだが、この国の文化に魅了され、その道で活躍している日本人女性の多いこと!彼女たちが発するオーラはエネルギーに溢れていて、いつもたくさんの刺激を貰う。これからもそんな女性たちと、彼女たちを虜にしたペルーの様々な文化を紹介して行けたらと思っている。