刑務所から神様の味を Turrón de San Miguelito

10月はSeñor de Los Milagros(セニョール・デ・ロス・ミラグロス)の月。そしてこの時期のお菓子はなんといってもトゥロン。ペルーの数少ない風物詩だ。

今日ある小冊子をパラリと見ていたら、甘そうな蜜とトゥロンを抱えて笑っている3人のシェフの写真に目が留まった。彼らはなぜか囲いの中にいる。タイトルは「味の囚われ人」。それは囚人たちが作るトゥロンについての紹介記事だった。

服役中の人が家具を作るといったことは日本でもある。が、ペルーでもそうした作業をしているとは、正直想像だにしていなかった。ペルーの刑務所の(私の)イメージはとにかく悪い。収容人数は軽くオーバーしており、定員の2倍超えは当たり前。刑務所内で殺人はあるし、面会者と子供は作っちゃうし、携帯から次の犯罪を指示するし、はっきり言ってなんでもあり。秩序など存在しない、悪の巣窟といったイメージなのだ。

しかしこの刑務所内のパン屋で働く人たちは、みなとても活き活きしているように見えた。特に今はトゥロンの注文が多く、夕方6時から翌朝6時までみっちり働いているらしい(労働基準法とか無視してください)。調べてみると、2011年には4mを越すトゥロンを作って、「国内の刑務所で作られた中で最も長いトゥロン」と表彰されたという。なんともほのぼのしているではないか。

16年前に作られたというこのパン屋。刑期を終えた囚人は、ここで学んだ技術を使って自分の店を持つ人が多いらしい。いいことだ。自立の道がなければ、またここに戻ってくることになるのだから。

San Miguelitoというブランド名の、ちょっと変わったこのトゥロン。伝統的な味のトゥロンはひと箱(約1kg)10ソレス、新作のアンデス・バージョン(キヌアやキゥイチャ、マカなどの粉を使用)は13ソレスだそうだ。ご注文は672-6769、囚人の妻たちが対応してくれる。

ペルーでは罪を犯しても一般社会に復帰するのは簡単だ。簡単すぎて反省などせず、犯罪を繰り返す輩も多いからその辺はどうしたものかと思うけれど、日本のように本人だけでなく家族までも職を失うとか有り得ない。この写真に写っている人(しかも名前と年齢まで記載!)たちも、出所後は地元でパン屋か何かを開いて「俺はあのサン・ミゲリートを作ってたんだぜ」と自慢するのだろう。ああ、逞しきはペルー人なり。こういうところが好きだ。