リマ バス物語 コンビ編 ふたたび

夕方のコンビ(十数人乗りのバン)には乗りたくないが、この日の選択肢がコンビしかなかったのだから、しかたがない。一番混む時間帯で、2台も乗車拒否(満席だった)されたあとにやっと乗れたコンビ。そんな状態だったのになんとか座れ、これはラッキーと身を沈めたのだが・・・。

長距離バス私の感覚ではs/.1.2ほどの距離だったが、コブラドール(もぎり)はs/.1.5と言った。高いと思ったけど、降りても次のバスに乗れる(ましてや座れる)可能性は低い。こんな渋滞する時間に座れないのは辛いので、言われた通りに払ったが、こういう「微妙な距離をちょっと多めに徴収するコブラドール」の時って必ず車内が揉める。

きっかけは、私より後に乗ってきたセニョーラに対し、コブラドールが「s/.1.5」と言い放ったことからだった。それは誰が聞いてもおかしいと言う金額で、当然そのセニョーラも文句をいい、1ソル以上を支払おうとしなかった(35円か52円かの差ですがね)。するとそのコブラドールはバス停で降りようとする彼女を制し、ドアを抑えたまま「まだだ、金を払え」と凄んだのだ。

当然車内は騒然となった。バス停で降りようとする客を降ろさないなんて?しかも料金を払ったのに!ここからがお節介&文句いいのペルー人の本領発揮。まず乗客Aがコブラドールに怒鳴り始めた。

「おい、じーさん、いい加減にしろよ!」
「このセニョーラが降りるって言ってんだろ!」
「聞こえないのかい、まったくこの年寄は!」
「乗客に対してrespeto (レスペト)がないんだよ!」

ま、そこまでは良いでしょう。あんたの声はデカすぎだけどね。ただ先のセニョーラが降りた後もしつこく文句を言い続けたため、今度は他の乗客B(女性)がAに対して切れてしまった。「ちょっとあなた、静かにしてもらえませんか?」

そう言われた男性Aは逆切れ。コブラドールからBにターゲットを替え、心外だと言わんばかりに大声で怒鳴り始めたのだ。「私はこのコブラドールに対して『さっきのセニョーラへのrespetoがない』って言ってんですよ!あんたにゃ関係ないでしょう!」

言われた女性Bも「あなたの声がうるさいって言ってんですよ!他の客へのrespetoはないんですか?バスの中ですよ!」と怒鳴り返し、二人のバトルが始まってしまった。

あーん、煩いよー。頼むから静かにしてくれよー。

こういう時に見て見ぬふりができないのは、やっぱりお節介人の血だろうか。今度は前の座席に乗っていた学生C君が参戦してきた。正義感いっぱい、若き血潮を滾らせつつ後ろを振り返ってAに言う。

「セニョール!こちらの女性にrespetoが足りないのではないでしょうか?」
「煩い!黙れ、この●××☆■の若造が!」

シーン・・・

たぶんすっごくすっごく下品な言葉だったんだろうな。私の隣で寝たふりをしていた女性は「ひっ!」と声を漏らし、学生C君は黙って下を向いてしまった。こういうスラングがすっと頭に入らない私って残念。覚えて得することはないけど、車内が凍るようなスラングってもう一度聞いてみたい・・・

その後も他の乗客が男性Aに何かを言い、その度にAは怒鳴り返していた。

「Falta respeto! (レスぺトが足りないんだよ!)」
「Hay que respetarlo! (レスペトしなきゃ!)」

レスペトのオンパレード。ちなみに、肝心のコブラドールは知らんぷりしてただひたすらに客寄せしていた。「そもそもお前やろが」という突っ込みは、誰もしなかった。

私の好きなスペイン語はgracias(ありがとう)、cariño(愛情)、そしてrespeto(尊敬・敬意)。でもさ、ペルー人が使うとちょっと意味が違う気もするんだよね。クレームを言う時の常套手段というか、殺し文句というか。違うでしょー、もっと大切な意味がこもってるでしょー。

まったくもう、飽きない人達である。