Ayahuasca(アヤワスカ) 前半

アヤワスカ。南米アマゾン川流域に自生するつる性の植物。その樹皮といくつかの薬草をあわせて煮出した汁を飲むと、強い幻覚作用が得られるという。今もなおシャーマンによる治療やまじないが行われているアマゾンで、アヤワスカの汁は、聖なる飲み物とされている。

その日の夕方、ガイドのアルフレッドに呼ばれロッジ内の小部屋に行くとそこには小柄で細身の男性が座っていた。

アヤワスカのシャーマン

彼がシャーマンだという。目力がある。誠実そうな瞳、落ち着いた話し方、安心感。「意識が朦朧とする」と言われる儀式において、シャーマンに対する信頼は必要不可欠。ましてや今回は女友達と2人での参加、いくつになろうとも、我が身を案ずることを怠ってはいけない(笑)

シャーマンは自分が準備したアヤワスカの液と、儀式に使う道具の説明をしてくれた。「shacapa/シャカパ」と呼ばれる葉を乾燥させた団扇、アヤワスカやチャクルーナの葉、タバコ、そして万が一の時に使うというレモンから作られた清めの液など。アヤワスカの幻覚が強すぎたり、悪霊に取り付かれた時に使うということだが願わくば使わずに終わりたい。

実はこの時、私たちの他にもう1人旅行者がいた。ペルー人青年、オマルだ。私たちと旅行日程が同じで、昼のジャングルツアーなども同行した仲間。彼は「こんな恐ろしい儀式を受けるなんて」と否定的だったが、私たちがシャーマンに会うというと、興味からついて来たのである。

しかし彼は、アヤワスカに対してとても悪い印象があるらしい。「ボクが見た映画では、アヤワスカを飲んだ男は狂ってしまったんだ!きっと恐ろしい幻覚を見るに違いない!」一体どんな映画を見たというのだろう?そのタイトルを聞き忘れたことが悔やまれる。あれこれとシャーマンに質問していたが、結局参加しなかった。リマっ子の彼にとって、お金を出してまですることではなかったのだろう。

激しい嘔吐を伴うことから、儀式前は絶食するものだと聞いていたのだが、なんとこのロッジでは「軽く食べたほうがいい」という指導をしていた。「食べなくても吐く。吐く物がなくても吐き続ける。だったら消化のいいものを少し食べて、吐くやすくした方が身体にいい」と。なんともごもっともな意見ではないか。こういう合理的な考えは大好きだ。

アヤワスカの儀式を行う小屋の内部

厨房には、今夜私たちがアヤワスカの儀式を受けることが前もって知らされていたのだろう、夕食にはマカロニと野菜のスープが出された。これから体験する儀式に少し緊張気味の私には、身も心も温まるご馳走だった。
部屋でしばし休憩。これからどんな体験をするのだろう。なんの変哲もない部屋の明かりが、なんだか妙に幻想的に見える。儀式開始前から「絶対何かを見てやる」などと企んでいる自分に、思わず苦笑する。